すき焼き用としゃぶしゃぶ用、違いは「厚み」だけ。売場のラベルの本当の意味

すき焼き用としゃぶしゃぶ用、違いは「厚み」だけ。売場のラベルの本当の意味 肉の選び方

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お肉売場からこんにちは。精肉部門の中の人です。

「すき焼き用としゃぶしゃぶ用、隣に並んでるけど、何が違うの? 部位も値段もほとんど同じに見える……」

そんな経験、ありませんか?

じつはあのラベル、部位の違いでも品質の違いでもなく、「厚みの表示」なんです。

毎日売場でお肉をスライスしていますが、同じ部位のかたまりから、機械の厚み設定を変えるだけで「すき焼き用」と「しゃぶしゃぶ用」の両方を作ることがよくあります。つまり、中身のお肉は同じことがあるんです。

先に結論だけ言うと、すき焼き用は「厚め」、しゃぶしゃぶ用は「薄め」。ラベルの言葉より、厚みを見て自分の家の料理に合わせて選ぶのが正解です。

「すき焼き用」「しゃぶしゃぶ用」の正体は、厚みの表示です

売場の裏側から種明かしをします。精肉部門では、かたまりのお肉をスライサーという機械で切っています。このとき、厚みをダイヤルで設定できるんです。

同じ肩ロースのかたまりでも、厚めに設定すれば「すき焼き用」、薄めに設定すれば「しゃぶしゃぶ用」としてパックされます。部位も産地も同じで、違うのは厚みだけ。そんなパックが同じ棚に並ぶことは、めずらしくありません。

厚みの数字は店によって差がありますが、私の店ではしゃぶしゃぶ用を0.5〜1ミリ、すき焼き用を1〜1.5ミリくらいに設定しています。「たった0.5ミリ?」と思うかもしれませんが、薄切りの世界ではこの差が食感を大きく変えます。

だから、「すき焼き用としゃぶしゃぶ用、どっちが上等?」という比較は、じつはあまり意味がありません。上等かどうかは部位と等級の話で、ラベルは切り方の話。別のものさしなんです。

厚みが変わると、火の入り方と食感が変わります

「0.5ミリの差で何が変わるの?」と思いますよね。変わるのは、火の入る速さと、噛んだときの満足感です。

薄いお肉は、火が一瞬で入ります。しゃぶしゃぶでお湯にくぐらせて数秒で色が変わるのは、薄いからこそです。そのかわり、煮汁の中で長く煮ると、縮んで硬くなりやすい面もあります。

厚いお肉は、火が入るまで少し時間がかかります。そのぶん煮汁の中でも縮みにくく、噛んだときに「お肉を食べた」という満足感が残ります。すき焼きのように甘辛い割り下でぐつぐつ煮る料理には、この厚みがちょうどいいんです。

逆の組み合わせを想像してみてください。厚めのお肉でしゃぶしゃぶをすると、火が通るまで時間がかかり、その間にお肉が硬くなりがちです。薄いお肉ですき焼きをすると、煮ているうちに縮んで、存在感が消えてしまいます。どちらも食べられないわけではありませんが、「思っていたのと違う」の正体はここにあります。

厚みが変わると、火の入り方と食感が変わります
厚みが変わると、火の入り方と食感が変わります

家の料理から逆に選ぶのが、いちばん失敗しません

ここからは棚の前の実況でいきます。ラベルを読む前に、「今夜どう食べるか」を先に決めてください。そこから逆に選ぶのが最短ルートです。

すき焼きなら、厚めのパック。 「すき焼き用」と書いてあるものをそのまま選んで大丈夫です。もし売り切れていたら、しゃぶしゃぶ用でも作れます。煮込みすぎず、割り下にさっとくぐらせる程度で引き上げると、薄さが弱点になりません。

実際、売場でもすき焼き用が切れている日は、しゃぶしゃぶ用をおすすめしています。切り落としの中に1枚の面積が大きいもの(売場では「版が大きい」と言います)があれば、それもすき焼きに使えますよ、とお客様にお伝えしています。

しゃぶしゃぶなら、薄めのパック。 迷ったら、より薄いほうを選んでください。すき焼き用しかない日は、お湯にくぐらせる時間を少し長めにすれば、問題なく食べられます。

肉じゃがや牛丼なら、じつはどちらでもいけます。 煮て味を含ませる料理なので、厚みの差はすき焼きやしゃぶしゃぶほど目立ちません。もっと言うと、切り落としで十分おいしく作れます。使い分けの詳しい話は牛肉の切り落としの選び方に書いたので、あわせてどうぞ。

つまり、ラベルどおりに使わないと失敗する、ということはありません。厚みの意味さえ分かっていれば、棚にあるもので十分やりくりできます。安心してください。

厚み以外に見るなら、部位と脂と「重なり方」です

厚みの次に見るポイントを3つだけ紹介します。

1つ目は部位。 すき焼き用でよく並ぶのは肩ロース・リブロース・もも。肩ロースとリブロースは脂の甘みがあり、ももはあっさりです。どの部位がどんな味かは牛肉の部位の使い分けにまとめてあります。

2つ目は脂の入り方。 パックを上から見て、白い脂の筋が細かく散っているものはコクが強く、赤身が多いものは軽い後味です。濃い割り下のすき焼きなら脂多め、ポン酢のしゃぶしゃぶなら赤身寄り、と食べ方に合わせて選ぶと外しません。

3つ目は、パックの中の重なり方。 ここは売場の人がよく見ているところです。薄いお肉は重ねたときに下の色がうっすら透けます。透け感が強ければ薄め、1枚1枚の端がしっかり折り重なって立体感があれば厚めです。ラベルが見えなくても、この見た目でだいたいの厚みが分かります。

パックを上から見たときの透け感の違い
パックを上から見たときの透け感の違い

ふだんの食卓は、スーパーの薄切りで十分おいしく作れます。そのうえで、年末の集まりや家族のお祝いなど「今日は特別」という日には、専門店のすき焼き用を取り寄せる手もあります。専門店が「すき焼き用」として出しているお肉は、部位も厚みもすき焼きのために選ばれています。近江牛のような銘柄牛を扱うお店ならそのぶん値は張りますが、行事の食卓には向いています。ふだんはスーパー、ハレの日はお取り寄せ、と使い分けるくらいの温度感がちょうどいいと思います。お取り寄せ系ではふるさと納税のお肉の選び方も書いているので、選ぶときの参考にしてください。

近江牛のすき焼き用を見てみる(カネ吉山本)

まとめ:ラベルは「厚みの表示」。料理から逆に選べばOK

今日のポイントをおさらいします。

  • 「すき焼き用」「しゃぶしゃぶ用」の違いは厚み。中身のお肉は同じことも多い
  • 厚いと煮ても縮みにくく食べごたえが残る。薄いと数秒で火が通る
  • 肉じゃがや牛丼はどちらでも作れる。切り落としでも十分

ラベルの言葉に迷わされなくなると、棚の前で立ち止まる時間が減って、そのぶん「今夜どう食べようか」を考える楽しみが増えます。

まずは次の買い物で、すき焼き用としゃぶしゃぶ用のパックを上から見比べてみてください。透け方の違いが分かったら、もうラベルに頼らず選べるようになっていますよ。

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