お肉売場からこんにちは。精肉部門の中の人です。
「特売で買いだめしたお肉、冷蔵庫の奥から期限切れで発見…」
そんな経験、ありませんか?
じつはお肉の保存は、何日目にどうするかより、買ってきた直後の10分でほぼ決まります。ここで手を打てば、特売のまとめ買いは強い味方になります。逆にパックのまま冷蔵庫に入れて終わりだと、お肉の傷みは静かに進んでいきます。
毎日売場でお肉を見ていますが、お肉は「時間との勝負」の食材です。だからこそ、家に着いてからの最初のひと手間が効きます。
先に結論だけ言うと、やることは「3つに仕分けて、冷凍する分だけパックから出して包み直す」。これだけです。
なぜ「パックのまま」だと傷みやすいのか
売場のパックは、持ち帰るまでの容器としては優秀ですが、保存の容器としては作られていません。理由は2つあります。
1つ目は、パックの中の空気です。トレーとラップの間には空気の層があり、お肉はその空気に触れ続けます。お肉は空気に触れるほど酸化が進み、色も風味も落ちていきます。
2つ目はドリップ、つまりパックの底にたまる赤い汁です。ドリップはお肉から出た水分で、雑菌が増えやすく、臭みの原因にもなります。お肉がドリップに浸かったまま何日も置かれるのは、いい状態ではありません。
売場で働く側の感覚でも、パックはあくまで「持ち帰り用」です。実際、お客様から「荷物がかさばるので、パックを小さくしてほしい」というご要望をいただくことがあるくらいで、パックは持ち帰りの都合を考えて作られています。中のお肉の保存まで面倒を見てくれる容器ではないんです。
もうひとつ大事なのが、パックに書いてある消費期限の読み方です。あの日付は「未開封のまま、冷蔵庫(4℃以下)で保存し続けた場合」の目安です。夏場に車で長く持ち歩いたり、冷蔵庫の開け閉めが多かったりすれば、表示より早く傷むこともあります。期限は「そこまで絶対大丈夫な日」ではなく「条件がそろって、そこまで」と考えてください。
帰ってきたら10分。やることは3ステップ
買い物から帰ってきたら、お肉だけは後回しにせず、先に片づけてしまいましょう。棚の前ならぬ冷蔵庫の前で、この順番でやってください。
ステップ1: 「今日・明日・それ以降」の3つに仕分ける
まず、買ってきたお肉を使う日で3つに分けてください。今日使う分、明日までに使う分、それより先の分。この仕分けがすべての出発点です。迷ったら「それ以降」に入れて冷凍してしまうのが安全です。
ステップ2: 今日・明日の分はチルド室へ
今日と明日に使う分は、パックのままで大丈夫です。置き場所だけ変えてください。おすすめはチルド室(冷蔵庫の下のほうにある、少し温度が低い引き出し)です。普通の冷蔵室より温度が低く、お肉の保存に向いています。
パックの底にドリップがたまっていたら、キッチンペーパーでさっと拭いてからしまうと、臭みの予防になりますよ。
ステップ3: それ以降の分は、パックから出して冷凍
ここが今日の記事の主役です。冷凍する分は、必ずパックから出してください。手順は3つです。
- 拭く: ドリップをキッチンペーパーで軽く押さえて拭き取る
- 包む: 1回で使う分ずつに分けて、ラップで空気が入らないようぴったり包む
- 袋に入れて平たく: 包んだお肉を冷凍用の保存袋に入れ、平たくのばして冷凍庫へ
ポイントは「空気に触れさせない」と「平たくする」の2つ。空気を遮ると冷凍焼け(パサパサになって風味が落ちる状態)を防げます。平たくすると早く凍るので味が落ちにくく、使うときの解凍も早くなります。前回のひき肉の記事で書いた「平たく冷凍」は、実はどのお肉にも効く基本ワザなんです。
お肉の種類別・冷凍のひとことメモ
基本は同じですが、種類ごとに少しだけコツがあります。
- ひき肉: いちばん傷みが早いので最優先で冷凍。平たくのばして急速冷凍(くわしくはひき肉の記事で)
- 薄切り・こま切れ: 1食分ずつ小分けにしてから包む。使うときに必要な分だけ取り出せます
- 鶏むね肉・もも肉: 塩などで下味をつけてから冷凍する「下味冷凍」と相性抜群(むね肉の下ごしらえはこちらの記事で)
- かたまり肉: 切らずにそのまま包んで冷凍のほうが、切り口が少ないぶん傷みにくいです
冷凍したお肉は、だいたい3週間を目安に使い切ってください。冷凍庫の中でも風味は少しずつ落ちていきます。「冷凍したから安心」ではなく「冷凍で時間を買った」と考えるのがちょうどいいですよ。
ここで私の失敗談をひとつ。大容量のパックを冷凍するとき、面倒くさがって十分に平たくせずに冷凍庫へ入れたことがあります。かさばって冷凍庫に入りきらなくなったうえ、あとで電子レンジで解凍したら、中心は凍ったままなのに表面だけ火が入りかけてしまいました。平たくするひと手間は、ちゃんと元が取れます。
解凍のコツ(冷蔵庫でゆっくり戻すのが基本です)は、それだけで1本書ける深さがあるので、あらためて別の記事で紹介します。
まとめ: お肉は「買った日」がいちばん新鮮
今日のポイントをおさらいします。
- お肉の保存は、買ってきた直後の10分で決まる
- 帰ったら「今日・明日・それ以降」の3つに仕分ける
- 今日明日の分はパックのままチルド室へ。ドリップは拭く
- 冷凍する分はパックから出し、ラップでぴったり包んで、保存袋で平たく
お肉は買った日がいちばん新鮮です。いちばんいい状態のうちに、いちばんいい形でしまってあげる。それだけで、特売のまとめ買いが「冷凍庫の宝物」に変わります。
まずは次の買い物の日、帰ってきたら10分だけ、お肉の時間を作ってみてください。
ちなみに、この記事で出てきた保存袋などの道具は、私が実際に家で使っているものを次回の記事で紹介する予定です。
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アイキャッチ画像: Photo by Toxic Smoker on Unsplash


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