パックの赤い汁は血じゃない。精肉のプロが教える正体と選び方

木のまな板にのった生の牛ステーキ肉。赤身が鮮やか 肉の選び方

お肉売場からこんにちは。精肉部門の中の人です。

「買ってきたお肉のパックを持ち上げたら、底に赤い汁がじわっ……。これって血? このお肉、大丈夫?」

先に答えを言うと、あれは血ではありません。「ドリップ」と呼ばれる、旨味を含んだお肉の水分です。危険なものではありませんが、たくさん出ているパックは旨味が逃げ始めたサインです。

売場で品出ししていると、「この赤いの、血ですよね?」というご質問を本当によくいただきます。私の答えはいつも同じ。「血ではないので心配いりませんよ。ただ、たくさん出ているパックは避けたほうがいいです」。

今日はこの赤い汁の正体と、あわせてよく誤解される「お肉の色」の話をまとめて解決します。

あの赤い汁の正体は「ドリップ」。血ではありません

まず一番の心配ごとから片づけます。売場に並んでいるお肉に、血はほとんど残っていません。お肉は加工の早い段階で血を抜く処理が済んでいて、そこから先の工程で血が混ざることはないからです。

では、あの赤い色は何なのか。正体は「ミオグロビン」という、お肉の赤い色のもとになる成分。お肉の中の水分がにじみ出るとき、この赤い成分も一緒に溶け出してくるので、血のように赤く見えるだけなんです。

このにじみ出た水分を、私たちは「ドリップ」と呼んでいます。問題は、ドリップがただの水ではないこと。お肉の旨味のもとになる成分も、水分と一緒に流れ出てしまっています。つまり、パックの底に汁がたっぷり溜まっているお肉は、おいしさが先に逃げてしまったお肉、ということです。

ドリップが出る主な原因は3つ。時間が経つこと、温度が上がり下がりすること、そして一度冷凍して解凍されること。どれもお肉の細胞から水分が抜け出やすくなる条件です。

私の実感では、ドリップがいちばん出やすいのは鶏むね肉です。品出しをしていると、お客様から「やっぱりこれは鶏さんの血ですよね?」とよく聞かれます。血ではなく、時間や温度で出てしまう水分だとお伝えしたうえで、それでも気になる方には、トレーや吸水紙を新しいものに替えてパックし直すご提案をしています。

売場でできる、汁の少ないパックの選び方

それでは、棚の前での選び方です。むずかしいことはなく、見る場所は2つだけ。

1つ目は、パックの底。棚の前でパックを軽く傾けて、底に汁が溜まっていないか見てください。傾けるのはほんの少しで十分です。汁がすっと動くほど溜まっているパックは、そっと棚に戻しましょう。

2つ目は、白いシート。お肉の下に敷いてある白いシートが、全体まで赤く染まっていないかを見てください。シートはドリップを吸うのが仕事なので、うっすら赤いのは普通です。端から端まで真っ赤に染まっていたら、それだけ多くの汁が出た証拠です。

この2つを見るだけで、同じ棚の中から状態のいいパックを選べるようになります。以前書いた当たりのお肉の見分け方(1本目)の色ツヤのチェックと組み合わせると、さらに外しにくくなりますよ。

買って帰ったあとは、パックに出ていたドリップをキッチンペーパーでさっと拭き取ってから保存してください。ここから先の手順は買ってきたお肉は『最初の10分』が勝負(7本目)で詳しく書いています。

「色が変わった=傷んだ」も、じつは誤解が多い

赤い汁と並んで多いのが、色についてのご質問です。お肉の色は思っている以上によく変わるもので、そのほとんどは傷みとは関係ありません。ケース別に見ていきます。

あずき色っぽい、暗い赤紫のお肉。これは切りたての色です。お肉の赤い色のもと(さきほどのミオグロビン)は、空気に触れると明るい赤に変わる性質があります。逆に言うと、あずき色はまだ空気に触れていない、切って間もない証拠。心配いりません、むしろ選んでいい色です。

重なった内側だけ黒っぽいお肉。スライスが重なっている部分の内側が黒ずんで見えることがあります。これも空気に触れていないだけです。家でパックを開けて広げておくと、しばらくして赤みが戻ってきます。捨てないでくださいね。

全体が茶色っぽくなってきたお肉。これは空気に長く触れて、色の成分が変化してきたサインです。すぐに危険というわけではありませんが、時間が経ってきたことは確か。売場でほかのパックと並んでいたら、より赤いほうを選んでください。冷蔵庫の中で茶色くなってきたものは、その日のうちに加熱して食べきるのがおすすめです。

まとめると、「明るい赤がベスト、あずき色と内側の黒ずみはセーフ、茶色は早めに」。色は鮮度のヒントにはなりますが、色だけで捨てる判断をするのはもったいない、ということです。

霜降り少なめで赤い色がはっきりわかる生の牛赤身肉
赤身の色がはっきり見えるお肉。(写真: Eiliv Aceron / Unsplash)

じゃあ、本当に危ないのはどんなとき?

ここまで「心配いりません」を続けてきたので、最後に本当の危険サインもお伝えします。見るべきは色ではなく、においと手ざわりです。

パックを開けたときに酸っぱいような、ツンとくるにおいがする。表面にぬめりがあって、洗っても落ちない。この2つがそろったら、加熱しても食べないでください。色がきれいでも、においとぬめりが出ていたらそちらを信じます。

私が現場で「これはもうダメ」と判断する決め手も、やはりにおいです。お肉のにおいには「獣臭」と「本当に臭い」場合があって、本当に臭いときは、先ほどの酸っぱいツンとしたにおいがします。ただ、獣臭との違いは正直わかりにくいものです。

だから、判断に迷うときは無理に自分で決めなくて大丈夫。買った日のうちに様子がおかしいと感じたら、レシートを持って買ったお店に相談してください。

まとめ

今日のポイントをおさらいします。

  • パックの赤い汁は血ではなく「ドリップ」。旨味を含んだお肉の水分
  • 選ぶときはパックの底と白いシートを見て、汁の少ないものを
  • あずき色と重なりの内側の黒ずみはセーフ。危険サインは色よりも、においとぬめり

赤い汁の正体がわかると、お肉売場での「これ大丈夫かな?」がひとつ減ります。不安で選んでいたお肉を、根拠を持って選べるようになる。それだけで、今日の晩ごはんは少しおいしくなるはずです。

まずは次の買い物で、パックを軽く傾けて底を見てみてください。

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アイキャッチ写真: Sergey Kotenev(Unsplash)

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