鶏もも・むね・ささみ、どれを買う? 精肉のプロは「火の入れ方」で選ぶ

肉の選び方

お肉売場からこんにちは。精肉部門の中の人です。

「鶏肉が安いのはありがたいけど、もも・むね・ささみのどれを買えばいいのか、正直よくわからない。むねはパサつくし、ささみは使いどころが謎。だから結局、今日ももも肉」

そんな買い物、していませんか?

じつはあれ、部位の知識が足りないせいではありません。選ぶときの「軸」を持っていないだけです。

毎日売場で3種類の鶏肉を並べていますが、迷わず選んでいくお客様には共通点があります。部位から考えるのではなく、今夜作る料理から逆算しているんです。

先に結論だけ言うと、鶏肉は「部位」で選ぶのではなく「火の入れ方」で選ぶ。長く火を入れる料理ならもも、短時間でさっと火を通す料理ならむね、いちばん繊細に扱いたいならささみ。この1本の軸だけで、売場で迷う時間がなくなります。

鶏肉選びの答えは「火の入れ方」にある

もも・むね・ささみの違いを一言でいうと、脂の量の違いです。ももがいちばん脂が多く、むねは少なく、ささみはほとんどありません。

そして脂の量は、そのまま「加熱への強さ」になります。脂が多いお肉は、長く火を入れても脂がジューシーさを守ってくれます。脂が少ないお肉は水分だけが頼りなので、火を入れすぎると水分が逃げてパサつきます。

だから使い分けはこうなります。

  • 煮る・揚げる・じっくり焼くなど、長く火を入れる料理には「もも」
  • 短時間でさっと火を通す料理、冷めてから食べる料理には「むね」
  • いちばん火加減に気をつかう、繊細に仕上げたい料理には「ささみ」

「むね肉はパサつくからハズレ」なのではなく、長時間加熱というももの土俵で戦わせているから負けるだけなんです。土俵さえ合わせれば、むねもささみもちゃんとおいしくなります。

実際に売場でも、お客様からこんな声を聞きます。「今日は鶏肉でステーキをしたいからもも肉がいい」「むね肉でステーキをするのは火加減が難しい」「ささみの大きさがちょうどいいからささみカツにする」。その日の料理にかけたい手間や、自分の腕前に合わせて部位を使い分けている方が多いんです。

3部位それぞれの得意料理と、パックの選び方

ここからは部位ごとに、向いている料理と、売場でパックを手に取ったときに見るポイントをお話しします。

もも肉:迷ったらこれ。加熱に強い万能選手

唐揚げ、照り焼き、煮物、カレー、鍋。火を入れる時間が長い料理は全部ももの得意分野です。脂のおかげで多少焼きすぎても失敗しにくいので、料理に自信がない日ほどももを選ぶのは、じつは理にかなっています。

売場では、パックを手に取ったらまず皮を見てください。皮にハリがあって、毛穴がプツプツと立っているものが新しい証拠です。皮がだらんと伸びて水っぽく見えるものは、時間が経っている可能性があります。次に身の色。濃いめのピンクで、パックの底に赤い汁(ドリップといいます)がたまっていないものを選んでください。

皮つきの鶏もも肉。皮のハリと毛穴の質感を見るのが選び方のコツ
皮のハリと毛穴のプツプツが新しさの目印(Photo by Satmar Meats on Unsplash)

失敗しがちな点はひとつだけ。脂が多いぶん、カロリーもいちばん高いことです。ヘルシーに食べたい日は、次のむね・ささみの出番です。

むね肉:短時間加熱と「冷めてもおいしい」の担当

むねが得意なのは、蒸し鶏、チキンソテー、サラダチキン、お弁当のおかず。さっと火を通して余熱で仕上げる料理と、冷めてから食べる料理です。脂が少ないので冷めても脂が固まらず、口当たりが重くなりません。お弁当に入れるならももよりむね、と覚えてください。

まな板の上の鶏むね肉。ほんのり透けるようなピンク色が新しい証拠
ほんのり透けるようなピンク色ならOK(Photo by Karyna Panchenko on Unsplash)

売場で見るポイントは、身の透明感です。ほんのり透けるようなピンク色ならOK。白くくすんで乾いた印象のものは避けてください。中央がふっくら盛り上がって、厚みがそろっているものだと火の通りにムラが出にくいです。

パサつきが心配な方、大丈夫です。むね肉は焼く前のひと手間でしっとり具合が大きく変わります。詳しい下ごしらえは別の記事にまとめているので、むねを買った日はこちらをどうぞ。

精肉のプロは鶏むね肉をこう選ぶ。しっとり仕上げる下ごしらえ付き

ささみ:いちばん繊細。「ごちそうの脇役」が似合う

ささみはむね肉の一部で、脂がほぼゼロの、鶏のなかでいちばん繊細な部位です。得意なのは、和え物、サラダ、フライ、小さなお子さんのごはんや、胃を休めたい日の食事。淡白さそのものを活かす料理に向いています。

「使いどころがわからない」と言われがちですが、考え方は簡単です。ゆでてほぐして、何かに混ぜる。これだけでバンバンジー、春雨サラダ、和え物と一気にレパートリーが広がります。ゆでるときは、沸騰したお湯に入れて火を止め、フタをして余熱で火を通すと、しっとり仕上がります。

売場では、身がふっくらして白い筋がきれいに通っているものを選んでください。真ん中の白い筋は加熱すると硬くなるので、調理前にフォークと指で引き抜くか、筋の両側に浅く切り込みを入れておくと口当たりが変わります。

ちなみに売場では、3部位のなかでむね肉が1日を通していちばん選ばれています。もも肉は、お客様がパックの日付をよく見る部位です。日付の新しいものが並ぶと、そこから一気に減っていきます。ささみがいちばん減るのは、午前中から昼過ぎにかけてです。

使い分け早見表:作りたい料理から逆算する

最後に、今夜のメニューが決まっている人向けの早見表です。売場に着く前にチラッと見てもらえれば、棚の前で迷いません。

作りたい料理選ぶ部位
唐揚げ・照り焼き・煮物・カレーもも
親子丼・鍋・じっくりグリルもも
蒸し鶏・ソテー・お弁当のおかずむね
サラダチキン・冷めてから食べる料理むね
和え物・春雨サラダ・バンバンジーささみ
フライ・お子さん向け・胃にやさしいごはんささみ

表のとおり、「長く火を入れるならもも、短時間ならむね、繊細に仕上げるならささみ」。この軸さえ頭にあれば、表を忘れても売場で判断できます。

ちなみに、どの部位も鶏肉は牛や豚よりいたみが早いお肉です。買って帰ったあとの扱いで持ちが変わるので、保存のやり方はこちらの記事にまとめています。

買ってきたお肉は「最初の10分」が勝負。プロの保存3ステップ

私自身も、自宅で鶏肉を調理するときはもも肉を選びます。じつは料理が得意ではないので、そのままステーキとして焼くだけ。以前むね肉でステーキをしたときは、火加減が難しくて苦労しました。その点もも肉は手軽に調理できるので、好んで選んでいます。

まとめ

今日のポイントをおさらいします。

  • 鶏肉は部位ではなく「火の入れ方」で選ぶ。長時間加熱はもも、短時間はむね、繊細な料理はささみ
  • むねのパサつきは部位のせいではなく、料理との組み合わせのミスマッチ
  • 売場では、ももは皮のハリ、むねは透明感、ささみはふっくら感を見る

いつも通り2〜3パック買うだけでも、部位の組み合わせを変えれば食卓の顔ぶれは変わります。同じ予算のまま、メニューの幅がひとまわり広がるわけです。

まずは次の買い物で、いつものもも肉の隣に、むねかささみを1パックだけ足してみてください。

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