肉用温度計は買いか? 精肉のプロが考える「要る人・要らん人」の線引き

まな板の上に置かれた厚切りの生ステーキ肉2枚 肉の調理・焼き方

お肉売場からこんにちは。精肉部門の中の人です。

※本記事にはプロモーションが含まれます

「ステーキは焼きすぎて固くなる。鶏むね肉は火の通りが心配で、結局カチカチになるまで焼いてしまう」

そんな経験、ありませんか?

じつはあの失敗、腕のせいではなく「中心の温度が見えていない」だけです。

毎日売場でお肉を見ていると、お客様から「何分焼けばいいの?」とよく聞かれます。でも精肉の世界では、焼き加減は時間ではなく温度で考えます。

先に結論だけ言うと、温度計は多くの人には要りません。ただし、厚いお肉をよく焼く人にははっきり効きます。この記事を読めば、自分がどちらなのか決められます。

なぜ「時間」ではなく「温度」なのか

前回の記事「安い牛肉が見違える焼き方」で、少しだけ温度の話をしました。今回はその回収です。

お肉のおいしさを決めているのは、焼いた時間ではなく「中心が何度まで上がったか」です。同じ「片面2分ずつ」でも、お肉の厚み、冷蔵庫から出した直後かどうか、フライパンの温まり具合で、中心温度はまったく変わります。レシピどおりに焼いたのに毎回仕上がりが違うのは、これが理由です。

たとえば牛のステーキなら、中心の温度が上がるにつれて、赤い状態からピンク、そして灰色へと変わっていきます。固くパサつくのは、上げすぎたときです。逆にローストビーフのしっとり感は、ちょうどいい温度で止められた結果です。

そしてもうひとつ、温度には安全の面もあります。鶏肉とひき肉は、中まで完全に火を通すのが大前提です。飲食店の衛生管理でよく使われる目安は「中心部を75℃で1分以上」。家庭でもこのくらいを目標にしておけば安心です。牛のステーキは表面をきちんと焼けば中がピンクでも楽しめますが、鶏肉とひき肉だけは「レアがおいしい」は絶対にありません。ここは覚えて帰ってください。

怖い話に聞こえたかもしれませんが、心配はいりません。普通に中まで焼けば届く温度です。問題は、火が通ったかどうかが外から見えないこと。それを数字で見えるようにするのが温度計です。

じつは私も、売場で「何分焼けばいい?」と聞かれたとき、時間では答えていません。ステーキなら「中火で表面全体に焼き色がつくまで焼いて、仕上げに強火でこんがりさせてください」とお伝えします。冷蔵庫から出してすぐか、常温に戻してあるかで火の通りは変わるので、時間では答えようがないんです。だから焼き色でお答えしています。

要る人・要らない人の線引き

温度計が効くかどうかは、料理の腕前ではなく「どんなお肉を焼くか」で決まります。

要る人は、厚さ3cm以上のお肉を焼く人です。 厚切りステーキ、ローストビーフ、かたまりの焼豚、鶏むね肉のしっとり加熱(低めの温度でじっくり火を入れるやり方)。こういう料理は、外から中心の状態がまったく見えません。切って確かめると肉汁が逃げるし、焼き直しもききません。ここで温度計は、勘を数字に変えてくれます。

要らない人は、薄切りと炒め物が中心の人です。 豚こまの炒め物、しょうが焼き、薄切りの焼肉。薄いお肉は数十秒で中まで火が通るので、色の変化を見れば十分です。測っている間に焼き上がります。週末にたまにステーキを焼く程度なら、次に紹介する「温度計なしの代用」で足ります。

その代用がこれです。厚めのステーキなら、焼き上がりにアルミホイルで包んで、焼いた時間と同じくらい休ませてください。余熱で中心までゆっくり火が入り、肉汁も落ち着きます。鶏むね肉なら、一番厚いところに竹串を刺して数秒待ち、唇の下に当てる。しっかり温かければ火が通っています。透明な汁が出るかどうかも合わせて見てください。昔ながらの方法ですが、理屈は温度計と同じ「中心の熱を確かめる」です。

つまりこういうことです。温度計は「上手になる道具」ではなく、「厚いお肉の失敗を減らす道具」。自分の台所に厚いお肉が登場する頻度で決めてください。

私も自宅で、鶏むねステーキで失敗したことがあります。表面はきれいに焼けているのに中まで火が通っておらず、何度も焼き直しました。次に焼いたときは、アルミホイルに包んで休ませる方法を試しました。焼き直しはなし。前回とは比べものにならないくらい、すんなり火が入りました。

買うなら見るべき条件は3つ

ここからは「買う」と決めた人向けです。売場でお肉を扱う目線と、道具選びの一般的な考え方から、条件を3つに絞ります。

1つ目は、反応の速さです。 刺してから数字が出るまでの秒数は、商品説明に書いてあります。数秒で表示が安定するものを選んでください。表示が遅いと、フライパンの上で待つ間にお肉の表面が焼けすぎますし、熱いのを我慢して待つのは続きません。「続けられるか」は速さで決まります。

2つ目は、丸洗いできるかです。 温度計は生のお肉に刺す道具なので、使うたびに洗うことが前提です。防水の表示があるか、先端だけでなく本体まで洗えるかを確認してください。洗いにくい道具は、いつの間にか引き出しの奥で眠ります。

3つ目は、表示の見やすさです。 実際に使うのはコンロの前、湯気の上がる場所です。数字が大きいか、画面が光るタイプか。細かい機能の数より、「調理中にパッと読めるか」のほうがずっと大事です。

価格帯は、数千円のもので十分です。高い温度計を買ってもお肉はおいしくなりません。おいしくするのは「何度で止めるか」という知識のほうで、道具はそれを見せてくれるだけです。上の3条件を満たす一番手頃なものを選んでください。

参考までに、この3条件を満たす手頃なものを2つだけ挙げておきます。「これを買え」という話ではなく、条件の当てはめ方の例として見てください。

国内メーカーで無難に選ぶなら(IPX7の防水で丸洗い可・温度を記憶する機能つき・2千円前後)

Amazonで「タニタ 温度計 TT-508N」を見る

楽天市場で「タニタ 温度計 TT-508N」を見る

とにかく速さを優先するなら(1秒で表示・防水・画面が光るタイプ・3千円弱)

Amazonで「ThermoPro デジタル料理温度計 TP19」を見る

どちらも数千円です。繰り返しますが、高いものを買ってもお肉はおいしくなりません。

鋳鉄フライパンで湯気を上げながら焼かれている厚切りステーキ

まとめ:まずは「休ませ」から始めよう

今日のポイントをおさらいします。

  • 焼き加減は時間ではなく、中心の温度で決まる
  • 鶏肉とひき肉は中まで完全に加熱。ここだけは例外なし
  • 温度計が効くのは厚さ3cm以上のお肉を焼く人。薄切り中心なら要らない
  • 買うなら見るのは、反応の速さ・丸洗い・表示の見やすさの3つ

温度計は、買っても買わなくても正解になれる道具です。大事なのは「中心の温度で考える」という目線のほうで、それさえ持ち帰ってもらえれば、今夜の食卓はちょっと変わります。

まずは次にステーキや鶏むね肉を焼くとき、焼き上がりをアルミホイルで包んで休ませてみてください。それで「厚いお肉、もっとちゃんとやりたい」と思ったら、そのときが温度計の買いどきです。

精肉部門では温度にとことん向き合っています。まず、加工場の温度。高いとお肉に負担がかかります。骨肌や筋を削ぎ落とすときも、必要以上にお肉に触れません。体温でお肉にダメージを与えないためです。私たちは毎日、それくらい温度に神経を使って仕事をしています。

温度の考え方の続きは、「安い牛肉が見違える焼き方」の記事でも書いています。まだの方はあわせてどうぞ。

写真: Sergey Kotenev、John Feng(Unsplash)

コメント

タイトルとURLをコピーしました