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お肉売場からこんにちは。精肉部門の中の人です。
「お肉をおいしく焼くなら鉄のフライパン」。料理好きの人ほどそう言いますよね。でも値段はそれなりで、重くて、手入れも面倒そう。鉄とテフロン、どっちにするか迷ったまま何年も経っている方、多いのではないでしょうか。
じつはこの迷い、フライパンの話に見えて、本当は「あなたが普段どんなお肉を焼いているか」の話なんです。
先に結論だけ言います。厚いお肉をよく焼くなら鉄は効きます。薄切りやこま切れが中心なら、今お使いのテフロン(フッ素加工)で十分です。
毎日売場でお客様の買い物カゴを見ていると、鉄フライパンが活躍するようなお肉を毎週買っていく方は、はっきり少数派だとわかります。
材質で選ばない。「何を焼くか」で選ぶ
フライパン選びで一番多いつまずきは、「鉄=おいしい」「フッ素=手軽」と、道具の性能どうしで比べてしまうことです。比べる順番が逆なんです。先に見るのは、あなたの食卓に一番よく登場するお肉のほう。
理由は単純で、鉄の良さが出るお肉と、出ないお肉がはっきり分かれているからです。厚みのあるお肉には鉄の強みがそのまま効きます。薄いお肉だと強みの出番がなく、くっつきやすいという弱点のほうが目立ちます。
だからこの記事では、道具の性能比較はしません。「鉄が効くお肉」と「フッ素で十分なお肉」に線を引きます。読み終わる頃には、ご自分の買い物カゴを思い浮かべるだけで、どちら側か決められるようになりますよ。
鉄フライパンが効くお肉はこれ
鉄が力を発揮するのは、こういうお肉です。
- 厚み2cm以上のステーキ
- ローストポークなどに使うかたまり肉
- ハンバーグの表面の焼き付け
- 厚切りの豚ロース(トンテキ用)
共通するのは、厚みがあって、表面を香ばしく焼き付けたいお肉だということ。
なぜ鉄が効くのか。鉄のフライパンは厚くて重いぶん、熱をたっぷりため込めるからです。よく温まった湯たんぽを想像してください。冷たいお肉をドンと置いても、フライパン自体の温度がガクッと下がりにくい。温度が保たれると、表面が短い時間で香ばしい焼き色になります。表面が早く仕上がるぶん、中まで火が入りすぎる前に焼き上げられる。「厚いお肉は鉄」の中身は、これだけです。

逆に、軽いフッ素加工で厚いステーキを焼くと、お肉を置いた瞬間に温度が下がり、焼き色がつくまで時間がかかります。その間ずっと火にかけ続けるので、表面は焼けたのに中はパサついた、になりやすいんです。厚いお肉を月に何度も焼くご家庭なら、鉄は元が取れる道具です。
はじめの1本にするなら、IHでも使えて手入れの負担が軽いものを選ぶと失敗しにくいですよ。
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ひとつ付け加えると、厚いお肉は道具の前に「焼く前の準備」で大きく差がつきます。安い牛肉が見違える焼き方。焼く前の「30分」と「筋切り」がコツに書いたので、ステーキを焼く日はこちらも読んでみてください。
ちなみに、売場で厚切りやかたまり肉がよく売れるのは、年末やお盆といった「ごちそうの日」で、連休前もよく動きます。ただ、これは黒毛和牛の話。豚バラや豚ロースのかたまり肉は、ごちそうの日に限らずよく売れている印象です。
フッ素加工で十分なお肉のほうが、多数派
ここが今日一番お伝えしたいところです。売場で毎日一番動いているのは、豚こま切れ、豚バラの薄切り、鶏むね肉、鶏もも肉。ほとんどのお客様の食卓の主役は、薄いお肉・普段のお肉なんです。
そして、この薄いお肉たちを焼くのに、フッ素加工で困る場面はほぼありません。
- 薄切りやこま切れは火の通りが速く、熱をため込む力の出番がない
- 鶏むね肉はくっつきやすく、フッ素加工のするっとはがれる良さが効く
- 炒め物は返す回数が多く、軽いフライパンのほうが腕が楽
むしろ薄切りを鉄で焼くと、慣れないうちはくっついて破れやすく、はがしているうちに火が通りすぎることもあります。鉄にすれば何でもおいしくなる、とはいかないんですね。
私自身、家にあるのはフッ素加工のフライパンだけです。平日の食卓は炒め物と鶏むね肉が中心なので、それで何も困っていません。売場に立っている人間がこうなのですから、「鉄を持っていない=料理に手を抜いている」なんてことは全然ないんですよ。ここは安心してください。
実際、平日に限らず一番よく手に取られていくのは、豚バラや豚ロースの薄切りです。なかでも豚バラの動きは速い。同じ豚バラでも、薄切りと、焼きそばやお好み焼き、肉巻きに使いやすい少し厚めのスライスがあって、日によって薄切りが選ばれたり、厚めが選ばれたりします。
フッ素加工は消耗品と割り切って、こびりつきが出てきたら気持ちよく買い替えるのがおすすめです。買い替えるなら、IHとガスの両方に対応したものを選んでおくと、引っ越しやコンロの入れ替えがあっても無駄になりません。
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鉄に手を出す前に確かめる3つ
「うちは厚いお肉をよく焼くから鉄側かも」と思った方も、買う前にこの3つだけ確かめてください。ここで「やめておく」となっても、それは立派な判断です。
1つ目は手入れ。 鉄は使い終わったらお湯で洗い、水気を飛ばして油を薄くなじませる、というひと手間が毎回つきます。放っておくとサビます。「洗って乾かして終わり」の今の習慣を変えられそうか、正直に考えてみてください。
2つ目は重さ。 同じサイズでも、鉄はフッ素加工よりずっしり重くなります。片手で振って炒め物をするのは、けっこうな力仕事です。お店で実物を持ってみてから決めるのが安心ですよ。
3つ目はIH対応。 ご自宅がIHの場合、鉄フライパンでも使えるものが多い一方、底の形状によっては反応が悪いことがあります。商品説明の「IH対応」の表記を必ず確認してください。
3つとも大丈夫なら、鉄はあなたの台所で長く働いてくれるはずです。1つでも引っかかるなら、無理をしないでください。フッ素加工で焼いた厚めのお肉だって、焼く前の準備しだいで十分ごちそうになります。

ちなみに、私がフッ素加工のフライパンを買い替えるときに見ているのは、何よりも扱いやすさです。小さすぎないサイズで、ちょっとしたお鍋料理や炒め物にも万能に使えるものを選びます。最近は取っ手が外せるフライパンもあるので、収納のしやすさで選ぶ手もありますよ。
まとめ
今日のポイントをおさらいします。
- フライパンは材質ではなく「何を焼くか」で選ぶ
- 厚いステーキ・かたまり肉・ハンバーグをよく焼くなら鉄が効く
- 薄切り・こま切れ・鶏むねが中心なら、フッ素加工で十分
- 鉄を買う前に、手入れ・重さ・IH対応の3つを確かめる
道具を増やすことだけが、食卓を豊かにする道ではありません。今ある道具で一番よく焼けるお肉を選ぶのも、立派な腕前です。
まずは、次に買うお肉のパックを思い浮かべてみてください。薄切りやこま切れが浮かんだら、今のフライパンのままで大丈夫。厚いステーキが浮かんだ方だけ、3つのチェックに進んでみてくださいね。


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