輸入のお肉が安い理由。精肉のプロが売り場で見ている国産との違い

国産と輸入の牛肉のパックを並べ、値段の差を示した図 牛肉

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「国産の牛肉と輸入の牛肉、並んでるけど値段が倍くらい違う。安いほうって、大丈夫なんかな……」

そんなふうに迷って、結局よく分からないまま値段で選んだこと、ありませんか?

じつはあの値段の差、「品質の差」というより「育て方とコストの差」なんです。

私は毎日、国産と輸入の両方のお肉を目の前で見ています。その立場から言わせてもらうと、「国産=正解、輸入=妥協」という考え方は、もったいないです。

国産と輸入はどちらが上でも下でもなく、料理によって使い分けるのが正解です。この記事を読み終わるころには、輸入のお肉を後ろめたさを感じずにカゴに入れられて、国産を選ぶときも「今日のメニューはこれだから国産」と理由を持って選べるようになります。

結論:どちらが上でもない。「向いている料理」が違うだけ

まず、いちばん大事なことから言います。国産と輸入は、優劣ではなく性格の違いです。

たとえるなら、軽自動車と大型車のようなものです。近所の買い物に大型車はいらないし、家族5人の旅行に軽自動車は窮屈です。どちらが上という話ではなく、使う場面が違うだけ。お肉もまったく同じです。

国産の牛肉は、脂の入り方(サシ)を重視して育てられたものが多く、やわらかくて風味が濃い。すき焼きやしゃぶしゃぶのように「お肉そのものを味わう料理」で力を発揮します。

いっぽう輸入の牛肉は、赤身が中心であっさりしています。脂が少ないぶんカロリーも控えめで、煮込みや炒め物のように「味付けと組み合わせる料理」なら、むしろ扱いやすいくらいです。

つまりあなたに必要なのは、「どっちが良いお肉か」を見抜く目ではなく、「今夜の料理にはどっちが向いてるか」で選ぶ習慣です。ここから、その判断材料を順番にお渡しします。

なぜ輸入のお肉はあんなに安いのか

「安いのには理由があるんでしょ?」——はい、あります。ただしその理由は「質が悪いから」ではありません。主にこの3つです。

1つ目は、育て方の違いです。
オーストラリアやアメリカでは、広大な土地で牛を放牧し、牧草や穀物で育てます。土地代も飼料代も日本より安く、一度に育てる頭数も桁違いに多い。日本の牛は、限られた土地で1頭ずつ手をかけて、サシが入るように時間をかけて育てられます。手間と時間の差が、そのまま値段の差になります。

2つ目は、規模の違いです。
海外の生産は「大きな工場」、日本の生産は「職人の工房」に近いイメージです。大量に作れば1つあたりのコストは下がる。お肉に限らず、どんな商品でも同じ仕組みです。

3つ目は、円安や輸送などの事情です。
輸入のお肉は船で運ばれてきますが、冷蔵・冷凍技術が進んだ今、輸送コストを含めてもなお国産より安く売れる価格構造になっています。逆に言うと、為替が動くと輸入のお肉の値段も動きます。「最近ちょっと高いな」と感じるときは、だいたい円安のときです。

安全性を心配される方もいると思いますが、日本に輸入されるお肉は、国の検疫と検査の仕組みを通ってから売り場に並んでいます。私は食品安全の専門家ではないので断定的なことは言いませんが、少なくとも「安い=検査されていない」ということはありません。

お客様から「この輸入のお肉って大丈夫?」と聞かれることも、よくあります。私はまず「大丈夫ですよ」とお答えします。ただ、それだけだと「店員さんだからそう言うんだろうな」と受け取られてしまうかもしれません。だから、正直な感想もひとこと添えるようにしています。「国産に比べると、輸入のお肉のほうが、口の中に広がる風味に少しクセがあると私は思います」。安心してもらったうえで、本音も隠さない。それが私なりの答え方です。

売り場で見比べると、ここが違う

ここからは、棚の前に立ったつもりで聞いてください。国産と輸入のパックを並べて見たとき、違いは主に3か所に出ます。

国産と輸入の牛肉の見た目の違いを比べた図。脂の色・サシの入り方・お肉の色の3項目を左右で対比している

まず、脂の色を見てください。
国産、特に和牛の脂は白く、輸入の牛肉の脂はややクリーム色〜黄色っぽいことがあります。これは牧草を食べて育った牛に出やすい色で、悪くなっているわけではありません。黄色っぽい脂を見て「古いのかな」と心配になる方がいますが、育ち方の個性なので、安心して大丈夫ですよ。

次に、サシの入り方です。
国産の牛肉は、赤身の中に細かく脂が網目状に入っているものが多い。輸入の牛肉は赤身がドンとあって、脂は外側にまとまっています。焼いたとき、サシの多いお肉はジュワッととろけ、赤身の多いお肉は噛むほどに味が出る。食感の好みが分かれるところです。

国産の牛肉といっても、「和牛」と「国産牛」は別のお肉です。牛の種類でいうと、和牛はたいてい黒毛和種のことを指します。国産牛は本来、国内での飼育期間がいちばん長い牛のことで、和牛も含みます。ただ、売り場では和牛と分けて、交雑種やホルスタイン種などを「国産牛」と表示することもあります。和牛はしっかりサシが入っているのが特徴です。国産牛は比較的赤身のお肉で、国産の牛肉だからといって、全部サシが入っているわけではありません。

最後に、お肉の色と厚みです。
輸入の牛肉は赤身が濃い赤色で、ステーキ用など厚めのカットが多いのも特徴です。色が濃いのは赤身が多い証拠で、鮮度の問題ではありません。鮮度の見分け方そのものは、スーパーの”当たりのお肉”の見分け方で詳しく書いているので、あわせて読んでみてください。

毎日両方を見ていて「これは意外と知られていないな」と感じる違いは、お肉に含まれている水分量です。国産はしっとりしていることが多く、輸入はお肉自体が水分により少し光っている傾向があります。

私ならこう使い分ける

では実際に、どの料理にどっちを選ぶか。私が家で買うときの判断をそのままお見せします。

料理別に国産と輸入のどちらが向くかをまとめた早見表。すき焼き・しゃぶしゃぶは国産、煮込みや炒め物は輸入、ステーキは両方

輸入で十分だと思うのは、味付けが主役の料理です。
カレー、ビーフシチュー、牛丼、プルコギ、チンジャオロース。ルーやタレの味がしっかり乗る料理は、お肉の繊細な風味の差がほとんど分からなくなります。ここに高い国産を使うのは、正直もったいない。赤身のしっかりした輸入の牛肉のほうが、煮崩れしにくくて向いている場面すらあります。

国産が活きるのは、お肉そのものを味わう料理です。
すき焼き、しゃぶしゃぶ、シンプルな塩コショウの焼肉。調味料が薄いぶん、脂の甘みや風味の差がストレートに出ます。「今日は特別な日」というときに国産を選ぶのは、味の面でもちゃんと理にかなっています。

ステーキは、好みで分かれます。
とろける食感が好きならサシの入った国産、がっつりお肉を噛みしめたいなら厚切りの輸入。私はステーキに関しては、赤身の輸入を選ぶことも多いです。安い赤身のお肉は焼き方ひとつで化けるので、コツは安い牛肉が見違える焼き方を参考にしてください。

ちなみにここまで牛肉の話を中心にしてきましたが、豚肉や鶏肉にも輸入はあります。こちらは牛肉のような「サシの差」で悩むことは少なく、値段と使い勝手で選んで大丈夫です。むしろ豚肉は、産地よりも部位選びのほうが仕上がりを左右します。そちらは豚肉のロース・バラ・肩ロースの違いをどうぞ。

実際、私も自宅用に輸入のお肉を買って、ステーキにしたことがあります。これがとても美味しかった。ステーキは自分で焼き加減を調節できるので、焼きすぎにさえ気をつければ、輸入でも十分美味しくいただけますよ。

ひとつだけ、売り場の側から補足を。「今日は特別な日」に国産を買おうと思っても、納得のいくものが並んでいるとは限りません。スーパーの国産は、その日の入荷次第だからです。記念日のように日が決まっているなら、産地から直接取り寄せるほうが確実です。

▶ 佐賀のブランド和牛「伊萬里牛」を、育てている牧場から取り寄せる

ただ、これはあくまで「ここぞ」の日の話です。普段のカレーや牛丼は輸入で十分。全部を国産にする必要はない、というのがこの記事でいちばん言いたいことです。

まとめ:値段ではなく「今夜の料理」で選ぶ

  • 輸入のお肉が安いのは、育て方と規模の違い。質が悪いからではない
  • 見た目の違いは「脂の色・サシ・お肉の色」の3か所。黄色っぽい脂は心配いらない
  • 味付けが主役の料理は輸入で十分。お肉が主役の料理は国産が活きる

「国産か輸入か」で悩む時間が、「今夜は何を作るか」を考える時間に変われば、買い物はもっと気楽になります。安いお肉を選ぶ日があっていいし、奮発する日があっていい。その両方を自信を持って選べるのが、いちばん食卓が豊かになる買い方だと私は思います。

まずは次の買い物で、今夜のメニューを思い浮かべてから棚の前に立ってみてください。「カレーだから今日は輸入でいこう」——そう思えたら、もうこの記事の内容はあなたのものです。

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この記事を書いた人
29labo

スーパーの精肉部門で働いています。毎日売り場でお肉を見て、切って、並べています。いつものスーパー・いつもの予算で、ちょっとおいしいお肉を選ぶコツを書いています。
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