夏バテのときに買うお肉は「豚の薄切り」。精肉のプロが売場で選ぶ3つの部位

皿に花びら状に並べた豚肉の薄切り 肉の選び方

お肉売場からこんにちは。精肉部門の中の人です。

「夏バテで食欲がない。スタミナつけなあかんとは思うけど、うなぎは高いし、焼肉を焼く気力もない…」

そんな経験、ありませんか?

じつは、夏バテのときにいちばん頼りになるのは、うなぎでも厚切りステーキでもなく、いつもの棚にある豚肉の薄切りなんです。

毎日売場でお肉を見ていますが、8月に入ると真っ先に動きが早くなるのは豚肉の薄切りコーナーです。買い物上手なお客様ほど、夏はここに直行される印象があります。

先に結論だけ言うと、「夏バテのときは、豚肉の薄切り(もも・ヒレ・こま)を冷しゃぶで」。これが売場の中の人の答えです。理由と選び方を順番にお話しします。

夏に豚肉が選ばれる理由

豚肉が夏の主役になる理由は、ビタミンB1です。豚肉は、お肉のなかでもビタミンB1が多い食材として知られています。

ビタミンB1は、ごはんやそうめんといった糖質をエネルギーに変えるはたらきを助けるとされています。夏はそうめんや冷やしうどんで食事を済ませがちですよね。糖質にかたよった食事が続くときこそ、豚肉を合わせる意味があります。

もうひとつ覚えておきたいのが、ニンニクや玉ねぎとの組み合わせです。ニンニクや玉ねぎに含まれる香り成分は、ビタミンB1の吸収を助けるとされています。「豚肉+ニンニク」「豚しゃぶ+玉ねぎスライス」は昔からの定番ですが、理にかなっているんですね。

「牛や鶏じゃあかんの?」と思われるかもしれません。もちろんどちらも立派なお肉です。牛肉は鉄分を摂りたいときに、鶏肉は脂を抑えてさっぱり食べたいときに向いています。鶏の部位選びは鶏もも・むね・ささみの使い分けにまとめているので、そちらもどうぞ。ただ「夏バテ対策で一枚選ぶなら」と聞かれたら、私は迷わず豚肉と答えます。

8月の売場では実際に、豚バラの薄切りが特によく動きます。豚ロースや肩ロースの薄切りも順調に売れていきます。反対に、豚ロースの生姜焼き用やテキカツ用は少し動きが鈍くなる印象です。

売場での選び方。部位はこの3つから

棚の前に立ったら、見るのはこの3つだけで大丈夫です。それぞれ「こんな人向け」と一緒にご紹介します。

さっぱり派は「もも薄切り」。 脂が少なめで、冷しゃぶにしても脂が固まらず食べやすい部位です。食欲がない日の一軍はこれ。パックを選ぶときは、お肉の色が明るいピンクで、パックの底に赤い汁(ドリップといいます)がたまっていないものを取ってください。汁が出ているものは、うまみが逃げはじめているサインです。

しっかり食べたい日は「ヒレ」。 豚肉のなかでもとくに脂が少なく、ビタミンB1も多い部位です。値段はももより上がりますが、一口カットのパックなら使い切りやすいですよ。

攻めるなら「豚レバー」。 ビタミンや鉄分を摂りたいときの選択肢です。ただしレバーは鮮度が命。表面につやがあって、色が濁っていないものを選んでください。角が溶けたようにダレているものや、パックの汁が多いものは避けましょう。とはいえ、スーパーの棚に並んでいるレバーは日付管理されたものなので、日付の新しいパックを選べば心配いりません。加熱は中まで完全に火を通すのが約束です。

「安くたくさん」なら豚こまも立派な選択肢です。豚こまの当たりパックの見分け方は豚こまの選び方で詳しく書いています。

トレイに並んだ豚の薄切り肉
写真: KWON JUNHO(Unsplash)

もうひとつ、薄切りパックの当たりの見分け方を現場目線でお伝えします。見るのは、赤身の外側についている脂の量です。薄切りをパックに詰めるときは、見栄えのよい面が上になるように並べるので、脂は自然と内側やお肉の重なりのほうへ入り込みます。だから、お肉同士が重なっているところに目をやってください。そこに必要以上の脂が入っていなければ、当たりのパックです。

食欲がないときは「冷やす・薄くする・酸味を足す」

買うお肉が決まったら、食べ方です。夏バテのときのコツは3つだけ。

1つ目、厚切りより薄切り。 薄切りは火の通りが早く、噛む力も要りません。食欲が落ちているときは、胃への負担が軽いほうが口に運びやすいです。夏に厚切りより薄切りが売れるのは、みなさん体で分かっているんだと思います。

2つ目、熱々より冷しゃぶ。 鍋にお湯を沸かしたら、沸騰させず、鍋底から小さな泡が上がるくらいの温度に落としてください。そこに薄切りを1枚ずつ広げて入れて、色が完全に変わったら引き上げる。氷水には取らず、ざるに広げて冷ますと、お肉が固くなりません。ここだけ守れば、しっとりした冷しゃぶになります。

3つ目、酸味とネギ・玉ねぎを添える。 ポン酢、梅だれ、ごまだれに酢を少し。酸味があると食欲がないときでも箸が進みます。玉ねぎスライスを添えれば、先ほどの「B1の吸収を助ける組み合わせ」も一皿で完成です。

元気が戻ってきたら、ニンニクを効かせた豚のスタミナ炒めに進んでください。家族や友達と外で焼く元気があるなら、お肉の量の目安を夏のBBQ・焼肉のお肉の選び方にまとめています。

鍋に盛られた豚の薄切り肉と水菜
写真: MChe Lee(Unsplash)

私が夏バテ気味のときによく作る豚肉メニューもひとつ。耐熱ボウル(または耐熱皿)の底にもやしと豆苗をしき、その上に豚バラを広げて乗せます。ふんわりラップをかけて、電子レンジで6分ほど加熱するだけ。ポン酢であっさりいただけて、もやしと豆苗で野菜も一緒にとれます。疲れて何も作りたくない日は、これで十分です。

※金属のお鍋は電子レンジに入れられません。必ず耐熱の器を使ってください。加熱時間は600Wの目安なので、お肉の色が変わっていなければ少しずつ追加してください。

まとめ

今日のポイントをおさらいします。

  • 夏バテのときに買うのは豚肉の薄切り。ビタミンB1が糖質をエネルギーに変えるはたらきを助けるとされているから
  • 部位は「さっぱりならもも」「しっかりならヒレ」「攻めるならレバー」。パックは色が明るく、汁がたまっていないものを選ぶ
  • 食べ方は「薄切り・冷しゃぶ・酸味だれ」。玉ねぎやネギを添えるとなおよし

うなぎを奮発しなくても、いつもの棚の豚肉で夏の食卓は立て直せます。

まずは次の買い物で、豚もも薄切りをひとパック。今夜は冷しゃぶで決まりです。

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