買い物袋を台所の床に置いたまま、洗濯物を取り込んで、子どもの用事をすませて。ふと見たら、袋の中に豚こまのパックが入ったままだった。気づいたのは夕方、という日があるかもしれません。
置いてしまったお肉の目安は「2時間まで」。気温が32℃を超える日なら「1時間まで」です。これはアメリカ農務省(USDA)が示している線で、日本の厚生労働省の資料には「何時間まで」という数字は書かれていません。
この時間を超えていたら、もったいなくても食べずに処分してください。においをかいで平気そうでも、それだけでは食中毒の原因になる菌がいるかどうかは分からないからです。
常温に置いたお肉は何時間まで?目安は2時間
まずは、置いていた時間と部屋の暑さで考えます。アメリカ農務省は、傷みやすい食品について次のように説明しています。
- 気温が32℃以下なら、2時間を超えて置かない
- 気温が32℃を超えるなら、1時間を超えて置かない
アメリカ農務省は、4℃から60℃くらいの温度を「危険な温度帯(デンジャーゾーン)」と呼んでいます。傷みやすい食品が、この温度の中ではすぐに傷んでいくからです。台所の床や車の中は、たいていこの温度帯に入ります。
日本の厚生労働省の「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」には、何時間までという数字はありません。そのかわり「冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫へ」と書かれています。日本の考え方は「時間を測る」より「すぐ入れる」が先、ということです。
だからこの記事では、アメリカ農務省の2時間を「これを超えたら食べない」上限として使います。2時間以内なら安全、という保証ではありません。
季節と部屋で、同じ2時間でも中身が変わります
夏の締め切った台所と、冬の玄関先とでは、同じ時間でもお肉の温度の上がり方がまったく違います。夏場や、日の当たる窓ぎわ、エアコンを切っていた部屋なら、時間の線を1時間に縮めて考えてください。
冬でも安心はできません。暖房の効いた部屋は、4℃から60℃の危険な温度帯にすっぽり入っています。「冬だから少しくらい平気」とは考えないでおきましょう。
迷ったときの決め方を、表にまとめます。
| 置いていた時間 | 判断 |
|---|---|
| 気づいたのが2時間以内(32℃超の日は1時間以内) | すぐに冷蔵庫へ入れ、早めに使い切る。少しでも迷ったら処分する |
| 2時間を超えた(32℃超の日は1時間を超えた) | 食べずに処分する |
| いつから置いていたか分からない | 食べずに処分する |
表の3行目がいちばん大事です。時間がはっきりしないときは、長く置いていたほうに数えてください。

見た目とにおいで決めてはいけない理由
「色も変わっていないし、においも普通。これなら食べられるのでは」と思う気持ちは、よく分かります。それでも、見た目とにおいで決めないでください。
理由は、お肉の「傷み」と「菌」が別ものだからです。傷み(腐敗)は、色の変化やぬめり、いやなにおいとして目や鼻に届きます。一方、食中毒の原因になる菌は、増えていても見た目やにおいがほとんど変わらないことがあります。
つまり、見た目とにおいで分かるのは「傷んでいるかどうか」だけです。「菌がいないかどうか」は、目でも鼻でも確かめられません。
焼いたから安心、とも言い切れません。迷ったら処分する。これがいちばん安全な選び方です。
鶏肉のにおいで迷ったときの見方は、こちらで詳しく書いています。
→ 鶏むね肉が臭いのは腐ってる? においの見分け方と、売り場で臭みを避ける選び方
鶏肉とひき肉は、とくに早めに判断を
常温に置いてしまったお肉の中でも、鶏肉とひき肉はとくに気をつけてほしいお肉です。
ひき肉は、お肉を細かくしたぶん、空気や手に触れる面がとても多くなっています。鶏肉は、食中毒の原因になる菌がついていることがあるとして、厚生労働省も生や加熱不足で食べないよう呼びかけているお肉です。鶏肉とひき肉は、時間の線ぎりぎりまで待たず、迷ったら早めに処分してください。
売り場の中の人が伝えている持ち帰り方
売り場で「買ってから何時間くらい持ち歩いて大丈夫?」と聞かれたら、私は「30分前後」とお答えしています。
この30分前後は、安全の上限とは別の話です。お肉は温度が上がるほど、ダメージを受けていきます。中の人としては、そのダメージをできるだけ減らして、買ったときに近い状態で食卓に届けてほしい。その思いからの目安です。
保冷剤があるなら、できるだけ使ってほしいと思っています。お肉へのダメージを減らしたいからです。ないなら、ないでもかまいません。そのぶん寄り道をせずに帰ってもらえたら十分です。
私自身は持ち帰るとき、お肉を冷たいものとくっつけて袋に入れています。
厚生労働省も、持ち帰り方について次の3つをすすめています。
- 生鮮食品のように温度の管理が必要なものは、買い物の最後に買う
- お肉は肉汁がもれないよう、ビニール袋などに分けて包む
- できれば保冷剤や氷と一緒に持ち帰り、買ったら早めに帰る
お肉売り場はお店の奥にあることが多いので、つい先にカゴへ入れたくなります。お肉は、レジに向かう直前に取る。この順番にするだけで、持ち歩く時間が短くなります。

入れ忘れを防ぐ、帰ってからの段取り
入れ忘れは、帰ってからの数分で起きます。玄関で電話が鳴った、子どもに呼ばれた、ほかの荷物を先に片づけた。そのすきに、お肉の袋だけが床に残ります。
防ぐコツは3つです。
- 帰ったら、お肉と冷凍食品だけ先に冷蔵庫へ入れる。 野菜や日用品はあとでかまいません。厚生労働省の呼びかけも「持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫へ」です。私も家に着いたら、まずお肉から冷蔵庫へ入れています。
- お肉は袋を分けて持ち帰る。 お肉だけの袋にしておけば、帰ってすぐ冷蔵庫へ入れる袋がひと目で分かります。
- 冷蔵庫を詰めすぎない。 厚生労働省の目安は7割ほどです。すき間がないと、お肉をいったん外に置いて場所を作ることになり、それが置き忘れのもとになります。
冷蔵庫の温度は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下が目安です。ドアの開け閉めが多い日は温度が上がりやすいので、お肉は奥のほうに入れておくと安心です。
すぐに使う予定のないお肉は、冷蔵庫にしまう流れで、そのまま冷凍まですませるのがおすすめです。家で冷凍したお肉は、2週間を目安に食べ切ってください。
→ お肉の小分け冷凍は何グラムずつ? 豚こま・ひき肉の人数別早見表
まとめ|時間が分からなければ処分、次からは「最後に買って、最初にしまう」
常温に置いてしまったお肉は、時間と気温で決めます。
- 目安はアメリカ農務省の2時間。気温32℃を超える日は1時間。超えたら食べずに処分する
- いつから置いていたか分からないときも、処分する
- 見た目とにおいで分かるのは傷みだけ。菌がいるかどうかは分からない
- 鶏肉とひき肉は、迷ったら早めに処分する
いま手元に迷っているお肉があって、置いていた時間がはっきりしないなら、残念ですが今回は処分してください。捨てるのはつらいですが、家族のおなかを守るための選択です。
次の買い物では、お肉をカゴに入れるのをレジの直前にしてみてください。保冷剤があれば一緒に袋へ入れて、寄り道をせずに帰る。家に着いたら、靴を脱いだその足でお肉を冷蔵庫へ。買ってから30分前後で冷蔵庫に入れられれば、お肉へのダメージを減らせます。
期限が近いお肉の扱いに迷ったときは、こちらもどうぞ。
→ お肉の消費期限、1日過ぎたら食べられない? 売り場の中の人の答えと、捨てないための段取り
参考
- 厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」(島根県のページに掲載された内容で確認)https://www.pref.shimane.lg.jp/bousai_info/syoku/anzen/chuudoku/point.html
- アメリカ農務省 食品安全検査局(USDA FSIS)「USDA Urges Consumers to Keep Clear of the Danger Zone This Summer」https://www.fsis.usda.gov/news-events/news-press-releases/usda-urges-consumers-keep-clear-danger-zone-summer
- 厚生労働省「カンピロバクター食中毒(『新鮮だから安全』ではありません!!)」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000130237.pdf


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