お肉売り場からこんにちは。精肉部門の中の人です。
「今夜は鍋にしよう」と決めて売り場に来たのに、しゃぶしゃぶ用、こま切れ、鶏もも、ひき肉と並んだ棚の前で手が止まったことはありませんか。前にこま切れを入れたら、塊になって硬くなった。そんな記憶があると、なおさら迷います。
じつは鍋のお肉は、部位より先に「鍋の味」で決めると迷いません。ポン酢で食べるあっさりした鍋と、味噌やキムチの濃い鍋では、向くパックが違うからです。
先に結論だけ言うと、あっさり鍋なら豚ロースか豚バラの「しゃぶしゃぶ用」、濃い味の鍋なら豚バラかこま切れ、水炊きなら鶏ももと手羽元です。量は1人前100〜150グラム、お肉が主役の鍋なら150〜200グラムが目安。こま切れを硬くしないコツは、1枚ずつ広げて入れることです。
鍋の味で決める、豚肉のパック
豚肉のパックは、鍋の味が濃いか薄いかで選びます。あっさりした鍋には脂が控えめで薄いお肉、濃い味の鍋には脂の甘みがあるお肉。この1点だけ覚えておけば、棚の前で迷う時間が短くなります。
ポン酢や塩で食べるあっさり鍋は、ロースかバラの「しゃぶしゃぶ用」。 寄せ鍋、豆乳鍋、白菜と豚の常夜鍋のような鍋がここに入ります。しゃぶしゃぶ用は薄いので、煮立った出汁にくぐらせるだけで火が通ります。あっさりした味でも、薄いお肉なら出汁の味がよくからんで物足りなさがありません。脂を控えたいならロース、コクがほしいならバラ。同じ棚には肩ロースのしゃぶしゃぶ用も並ぶので、こちらを選んでもかまいません。
ここで1つ、パックの表示の見方をお話しします。「しゃぶしゃぶ用」は部位の名前ではなく、厚みの呼び名です。冬になると売り場には、豚ならバラ・ロース・肩ロースのしゃぶしゃぶ用が並びます。牛なら黒毛和牛のモモ・ウデ・肩ロース・ロースと、4つの部位にしゃぶしゃぶ用があります。棚の前に立ったら、まず「しゃぶしゃぶ用」の文字を探し、次にその横の部位名を見てください。厚みの違いはすき焼き用としゃぶしゃぶ用、違いは「厚み」だけで書きましたので、ここでは深入りしません。
味噌、キムチ、もつ鍋風のような濃い味の鍋は、豚バラの薄切りかこま切れ。 濃い味には脂の甘みがあるお肉のほうが負けません。バラは脂が多いぶん、煮ても硬くなりにくいお肉です。こま切れや切り落としもこの鍋に向いています。値段が手ごろで、濃い味なら部位が混ざっていても気になりません。硬くならない入れ方は最後の章でお話しします。
「鍋用」と書かれたパックを置いているお店もあります。中身は薄切りやこま切れであることが多く、表示の横の部位名とグラム数を見れば、ほかのパックと比べられます。鍋のためだけのお肉を買わないといけないわけではありませんので、安心してください。
ロース・バラ・肩ロースの性格の違いは、豚肉のロース・バラ・肩ロース、違いと使い分けにまとめてあります。
鶏肉とひき肉は、水炊きと鶏団子で選ぶ
鶏肉の鍋は、出汁を取りたいか、具として食べたいかで買うパックが変わります。冬の売り場に鍋用として並ぶのは、鶏もものぶつ切りと鶏むねのミンチです。出汁も具も両方ほしい水炊きなら、鶏ももと手羽元を一緒に買うのがいちばん簡単です。
水炊きの主役は鶏もも。 皮つきのまま一口大に切って入れます。鍋用のぶつ切りのパックなら、切る手間もいりません。皮と脂から旨みが出て、煮ても硬くなりにくいので、鍋で食べる鶏肉はこれが基本です。鶏むねは淡白で、煮続けるとパサつきます。むねを使うなら薄くそぎ切りにして、食べる少し前に入れ、中まで白くなったら引き上げてください。むねが悪いわけではなく、鍋では入れる順番を変えるだけで十分おいしく食べられます。
出汁を濃くしたいなら手羽元を足す。 骨から旨みが出るので、水炊きでは最初に入れて煮ておきます。骨のまわりは火が通るのに時間がかかるので、15分ほど煮てから、骨に沿って切り込みを入れ、赤みが残っていないのを確かめて食べてください。もも・むね・ささみの性格は鶏もも・むね・ささみの選び方で書いています。
鶏団子・つみれは鶏ひき肉。 売り場に鍋用として並ぶのは、鶏むねのミンチです。豚ひき肉でも団子は作れますが、鍋にすると脂が浮きやすいので、あっさり食べたい日は鶏をおすすめします。ひき肉のパックの見方はひき肉の選び方に書きました。団子は中まで火を通す前提で、小さめに丸めて、浮いてからさらに数分煮て、1つ割って中まで色が変わっているのを確かめてください。
1人前は何グラム? 人数別の目安
鍋のお肉は、1人前100〜150グラムが目安です。豚しゃぶのようにお肉が主役の鍋なら150〜200グラム。野菜や豆腐、魚介もたっぷり入る寄せ鍋なら100グラムほどでも足ります。参考までに、中の人の家では1人で鍋をするとき、豚バラを200グラム買います。目安の上限にあたる量です。「多めに買って余らせる」より、この目安で買って足りなければ野菜で補うほうが、翌日に困りません。
人数ごとの目安を表にしました。パックのラベルに書いてあるグラム数を見て、この数字に近いパックを1つか2つ手に取れば済みます。
| 人数 | 豚しゃぶ・寄せ鍋(豚薄切り) | 水炊き(鶏もも+手羽元) | 鶏団子(鶏ひき肉) |
|---|---|---|---|
| 2人 | 300〜400g | もも300g+手羽元4〜6本 | 200〜300g |
| 3人 | 450〜600g | もも450g+手羽元6〜8本 | 300〜450g |
| 4人 | 600〜800g | もも600g+手羽元8〜10本 | 400〜600g |
手羽元は1本が50〜60グラムほどで、1人2〜3本が目安です。鶏団子は、ひき肉だけでなく豆腐や野菜を混ぜてかさを増やせるので、表より少なめでも足ります。
買ったお肉が余ったら、その日のうちに小分けにして冷凍してください。翌日に「昨日の残り」で鍋をもう一度やるより、凍らせて次の鍋に回すほうがおいしく食べられます。分け方の目安はお肉の小分け冷凍、何グラムで分ける? 人数別の早見表にまとめてあります。
こま切れでも硬くしない入れ方
こま切れが鍋で塊になるのは、お肉のせいではなく入れ方のせいです。パックの中でくっついたまま出汁に入れると、外側だけ先に固まり、中は生のまま。それをほぐそうと煮続けるうちに、外側が煮すぎて硬くなります。ここを直せば、こま切れはあっさり鍋にも使える便利なお肉です。
入れる前に、パックの上でほぐしておく。 買ってきたこま切れは、パックの中で重なって固まっています。鍋の前に、菜箸か手で1枚ずつはがして、皿に広げておいてください。冷蔵庫から出したばかりの冷たいお肉を塊で入れると、出汁の温度が下がって、余計にくっつきます。
沸いた出汁に、1枚ずつ広げて入れる。 出汁がぐらぐら煮立ってから、広げたお肉を1枚ずつ落とします。菜箸で軽く泳がせると、色が変わったところからほどけていきます。一度に入れるのは、そのとき食べる分だけ。残りは皿に置いたまま、次の分を入れるときにまた1枚ずつ。
色が変わったら、煮続けない。 豚肉が硬くなるいちばんの原因は、火が通ったあとも煮続けることです。薄切りやこま切れは、赤みが消えて白くなればもう食べられます。鍋の端に寄せておくと、そこでもどんどん火が入るので、色が変わったらすぐ取り皿へ。食べるペースに合わせて、少しずつ足していくのがいちばんおいしい食べ方です。
売り場でよく聞かれるのが、「しゃぶしゃぶ用じゃない薄切りでもいい?」という質問です。結論から言うと、切り落としでも使えます。煮る時間が少し長くなるだけで、ちゃんとおいしく食べられます。ただ、切り落としには1枚1枚がとても小さい切れ端ばかりのパックが混じっていることがあり、そのときはお客様と一緒にパックを選びます。こま切れも同じで、パックによって部位の混ざり方が違います。鍋に向く当たりのパックの見つけ方は、豚こまの「当たりパック」の見つけ方に書きましたので、あわせて読んでみてください。

まとめ
今日のポイントをおさらいします。
- あっさり鍋は豚ロースかバラの「しゃぶしゃぶ用」、濃い味の鍋は豚バラかこま切れ
- 水炊きは鶏もも+手羽元、鶏団子は鶏ひき肉
- 量は1人前100〜150グラム。お肉が主役の鍋なら150〜200グラム
- こま切れは、ほぐしてから1枚ずつ沸いた出汁へ。色が変わったら煮続けない
鍋は、お肉の選び方ひとつで「今日は当たりだったね」と食卓の空気が変わる料理です。高いお肉を買わなくても、味に合ったパックを選び、入れ方を変えるだけで十分おいしくなります。
次に鍋の日が来たら、売り場に入る前に「今夜はポン酢か、味噌か、水炊きか」だけ決めてください。そのあとは、棚の前で「しゃぶしゃぶ用」か「バラ」か「鶏もも」の文字を探して、人数ぶんのグラム数に近いパックを1つ手に取る。それで今夜の鍋は決まります。


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