お肉売り場からこんにちは。精肉部門の中の人です。

水分(しっとりの素)が保たれた、みずみずしいむね肉(写真: Cristian Guillen / Unsplash)
「鶏むね肉は安いし体にいいから買うけど、どう頑張ってもパサパサになる。結局もも肉に戻ってしまう」
そんな経験、ありませんか?
じつはあれ、焼き方だけの問題ではないんです。売り場でパックを選んだ時点で、しっとり仕上がるかどうかは半分決まっています。でも大丈夫。選ぶところから見直せば、むね肉はちゃんとしっとりしますよ。
毎日、何十パックものむね肉を並べていると、「これは当たり」「これは火を通すと硬くなるだろうな」という差がはっきり見えるんです。
先に結論だけ言うと、「ドリップの少ないパックを選び、焼く前に砂糖と塩で水分を抱え込ませる」。これだけで、むね肉は別物になります。
なぜ鶏むね肉はパサつくのか
理由はシンプルで、脂が少ないからです。
もも肉は脂が多いので、多少焼きすぎてもジューシーさが残ります。むね肉は脂が少ないぶん、水分だけが頼り。ところがお肉のタンパク質は、加熱すると縮んで水分を外に押し出す性質があります。つまりむね肉は、
- もともと水分頼みなのに
- 加熱で水分がどんどん逃げる
という宿命を背負っているわけです。だから対策も2つ。「水分の多い(=抜けていない)パックを選ぶ」「水分を逃がさない下ごしらえをする」。難しそうに聞こえるかもしれませんが、この記事でやるのはこの2つだけ。特別なことはしませんから、安心してくださいね。
むね肉が広告の品になる日には、品出しをしているとお客様から「むね肉の調理ってすぐパサつくから難しい」と相談されることが増えます。確かに、なんとなく選んだむね肉をなんとなく調理すると、パサつきやすくなるのかなと感じます。でも裏を返せば、選び方と焼き方をちょっと意識するだけでいいということでもあります。
中の人の、鶏むね肉パックの選び方
棚の前に立ったら、見るポイントは3つです。
1. パックの底の「赤い汁」(ドリップ)が少ないもの
ドリップは、お肉から抜け出た水分です。パックを手に取って、少し傾けてみてください。底で赤い汁が動くようなら、しっとりの素である水分がすでに逃げ始めているサインです。汁が動かず、底が乾いているくらいのものを選べば大丈夫。これがいちばん確実な見分け方です。
2. 透明感のあるピンク色のもの
新鮮なむね肉は、ほんのり透明感のあるピンク色をしています。この色なら迷わずカゴへ入れてください。白っぽくくすんでいたり、表面が乾いた印象のものは時間が経っているので、そこだけそっと戻してあげれば大丈夫です。

3. 身がふっくらして、厚みが均一なもの
平べったく伸びたものより、中央がふっくら盛り上がっているものを選んでください。厚みが揃っているほうが火の通りも均一になり、「端は硬いのに中心は生っぽい」という失敗が減ります。ここまで見てあげれば、当たりのパックです。
加工場でむね肉をパック詰めしていると、本当に色んなお肉に出会います。中には、異常に大きく成長したむね肉があります。見分け方は、お肉本体の大きさを見るより、1パックあたりの価格を確認するほうが分かりやすいです。他のパックより価格が高いもの、それが大きなむね肉です。また、大きなむね肉には表面に縦じわが入っていることがあります。そういったむね肉は加熱すると硬くなりやすいので、気になる日は避けておくと安心ですよ。
しっとりさせる下ごしらえ(今夜からできる版)
選び方で半分決まったら、残り半分は下ごしらえです。コツは3つ。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1. 砂糖と塩をもみ込む | むね肉1枚約300gに砂糖・塩各小さじ1/2をもみ込み、冷蔵庫で10分置く |
| 2. そぎ切りにする | 包丁を寝かせて、繊維を断ち切る向きに切る |
| 3. 中心の加熱を確認する | 中心75℃で1分以上を目安に確認する。商品に加熱方法がある場合は従う |
1. 砂糖と塩をもみ込んで10分置く
台所に立ったら、むね肉1枚(約300g)に、砂糖小さじ1/2と塩小さじ1/2をもみ込んでください。砂糖には水分を抱え込む力があり、塩にはお肉のタンパク質を変化させて水分を保つ力があります。時間がなければ10分でも効果あり。朝のうちにやって冷蔵庫に入れておけば、夜は焼くだけです。
2. 繊維を断つように「そぎ切り」にする
むね肉は場所によって繊維の向きが変わります。繊維に沿って切ると、噛んだときに硬く感じる原因になります。包丁を寝かせて、繊維を断ち切る向きでそぎ切りにしてください。それだけで、同じお肉でも食感が変わります。
3. 加熱しすぎず、中心の加熱は確認する
むね肉は加熱しすぎると水分が抜けますが、余熱だけで加熱を終えないでください。温度計で中心を測り、家庭での目安である75℃で1分以上を確認します。商品に加熱方法が書かれている場合は、その案内にも従ってください。
加熱の目安は厚生労働省の家庭向け食中毒予防、低温・余熱調理の注意点は食品安全委員会の案内で確認できます。
個人的には、紹介した方法でかなり上手に調理できると思います。ですが時短を目指すなら、小麦粉を使うのもオススメです。
うちでよくやるのが、そぎ切りにしたむね肉に小麦粉を軽くまぶして、そのまま鍋に入れるやり方です。粉が薄い膜になって、お肉の水分が煮汁へ逃げるのを防いでくれます。何もせずに入れたときと比べると、同じむね肉とは思えないくらい柔らかい。しかも煮汁に少しとろみがついて、味も絡みやすくなります。
切って、粉をまぶして、入れるだけ。砂糖と塩をもみ込む時間がない日は、これだけでも十分違いが出ますよ。
まとめ
今日のポイントをおさらいします。
- むね肉のパサパサは「脂が少なく水分頼み」なのが原因。選び方と下ごしらえの両方で対策する
- 売り場では「ドリップが少ない・透明感のあるピンク・ふっくら厚み均一」の3点で選ぶ
- 下ごしらえと焼き方は「砂糖と塩をもみ込む・そぎ切り・加熱しすぎず中心は確認する」の3点
いつもの買い物カゴに入れる一番安いお肉が、ちゃんとおいしくなる。それだけで今日の晩ごはんは、ちょっとごちそうになります。
まずは次の買い物で、パックの底をのぞいてみてください。
むね肉のいちばんの敵は火の入れすぎです。中心温度が分かるとパサつきの失敗がぐっと減るので、温度計はうちの台所に要るのか、の線引きも参考にしてみてください。
(関連記事:スーパーの”当たりのお肉”の見分け方。精肉部門の中の人が教える選び方のコツ3つ)
アイキャッチ・お肉の写真: Joe Boshra / Philippe Zuber / Cristian Guillen(Unsplash)


コメント