「地鶏、○○どり、若どり……。鶏肉のパックって名前がいろいろあって、何が違うのかわからない。高いほうを買ったほうがいいの?」
棚の前で、そんなふうに手が止まったことはありませんか?
名前の違いを整理します。地鶏は国の決まり(JAS規格)を満たした特別な鶏で、スーパーで見かけることはめったにありません。スーパーに並ぶ「○○どり」という名前つきの鶏の多くは、銘柄鶏(めいがらどり)です。そして毎日のごはんなら、いちばん手ごろな若どりで十分。精肉部門で働く私も、家で買うのは若どりです。
高いほうを選ばなくても大丈夫ですよ。3つの違いと、パックのどこを見れば地鶏かどうかわかるのかを、順番にお伝えします。
地鶏・銘柄鶏・若どりの違いは「決まりがあるかどうか」
ひとことで言うと、地鶏は国の規格で条件が決まっている鶏、銘柄鶏は育て方を工夫した名前つきの鶏、若どりは3か月未満で出荷される鶏です。まずは早見表で全体をつかんでください。
| 種類 | どんな鶏? | 国の決まり | 見かけやすさ |
|---|---|---|---|
| 地鶏 | 在来種の血をひき、長く・広く育てた鶏 | あり(JAS規格) | 出回る量はごくわずか |
| 銘柄鶏 | エサや育て方を工夫した名前つきの鶏 | なし(業界団体の定義のみ) | スーパーでも見かける |
| 若どり | 3か月未満で出荷される鶏 | 取引の規格で年齢を区分 | いちばん身近 |
地鶏は、国の規格で4つの条件が決まっている
「地鶏」を名乗れる鶏肉は、農林水産省の「地鶏肉の日本農林規格(JAS規格)」で条件が決められています。条件は次の4つです。
- 昔から日本にいる鶏(在来種)の血を50%以上ひいていて、生まれを証明できる
- ふ化した日から75日以上育てる
- 生後28日目からは平飼い(鶏舎の床や地面を自由に歩き回れる飼い方)にする
- 平飼いの広さは、1㎡あたり10羽以下にする
古い資料では飼育期間を「80日以上」としているものもありますが、平成27年に改正された今の規格では75日です。
日数をかけ、歩き回りながら育つぶん、地鶏は歯ごたえがしっかりしていて、かむほどにうまみが出るのが持ち味です。
銘柄鶏は、国の規格がない「名前つきの鶏」
銘柄鶏には、地鶏のような国の規格はありません。業界団体の日本食鳥協会は、「地鶏より育ちが早い肉用の品種を、エサや出荷までの日数などを工夫して育てた鶏」という意味の定義をしています。
工夫の中身は生産者ごとに違います。パックに書かれた説明を読むと、その鶏が何にこだわって育てられたのかがわかりますよ。
若どりは、3か月未満で出荷される鶏
若どりは、農林水産省の「食鶏取引規格」で「3か月齢未満の鶏」とされている区分です。やわらかくてクセが少なく、唐揚げにも照り焼きにも使える、いちばん身近な鶏肉です。
ひとつ補足すると、「若どり」は年齢の区分で、「地鶏」「銘柄鶏」は育ち方の区分です。そのため、名前つきの鶏のパックに「若どり」と書かれていることもあります。表示の間違いではないので、安心してくださいね。
スーパーで地鶏は買える? パックの表示はここを見る
スーパーで地鶏を見かけることは、正直に言って少ないです。手間と日数をかけて育てるので、出回る量そのものがとても少ないからです。
それでも見分け方を知っておくと、旅先のお店や産地の直売所で出会ったときに迷いません。棚の前に立ったら、商品名やパックのラベル(値段や産地が書かれたシール)に「地鶏」の文字があるかを見てください。
JAS規格の認定を受けた地鶏なら、次の3つの表示も一緒に書かれています。
- 組合せ:父と母の品種(例:「父○○×母○○」)
- 飼育期間:「○○日」「○○日以上」など
- 飼育方法:「平飼い」など
ブランド名や産地名の大きなシールがついていても、「地鶏」の文字がなければ、多くは銘柄鶏か若どりです。
ここで誤解してほしくないのは、「地鶏じゃないからハズレ」ではないということ。銘柄鶏には生産者の工夫が詰まっていますし、若どりは毎日の食卓を支えてくれる頼もしい鶏です。見分ける目的は、高いほうを選ぶためではなく、自分が何を買っているかを知るためです。

どれを買う? 中の人は若どり、こだわる日は名前つき
ここからは、中の人としての本音です。私が家で買うのは若どりです。理由は、それはもう値段。手ごろな若どりが、家計にはいちばん助かります。それに、若どりでも十分おいしい。これは私の実感です。
一方で、売り場から見ていると、味にこだわるお客様や飲食店の方は、名前つきの鶏(銘柄鶏)を買われています。
値段は、地鶏がいちばん高く、銘柄鶏は若どりより少し高めのことが多いです。迷ったら、次のように使い分けてみてください。
- ふだんの唐揚げ、照り焼き、炒めものには、若どり
- 鶏そのものの味を楽しみたい日には、名前つきの銘柄鶏
- 特別な日の塩焼きや焼き鳥には、地鶏
地鶏は歯ごたえがあるぶん、味つけを控えめにして焼くと持ち味が伝わりやすい鶏です。反対に、やわらかさを楽しみたい料理は若どりの得意分野。どの部位を選ぶかで迷ったら、「鶏もも・むね・ささみ、どれを買う? 精肉のプロは「火の入れ方」で選ぶ」も参考にしてください。

名前つきかどうかで迷うのは、豚肉も同じです。三元豚と普通の豚の違いは「三元豚と普通の豚の違いは?精肉の中の人でも見た目ではわからない話」で書いています。
まとめ
- 地鶏は、国のJAS規格(在来種の血50%以上・75日以上・平飼い・1㎡あたり10羽以下)を満たした鶏。スーパーで見かけることはめったにない
- 「○○どり」と名前のついた鶏の多くは銘柄鶏。国の規格はなく、生産者が育て方を工夫した鶏
- 若どりは3か月未満で出荷される鶏。毎日のごはんなら若どりで十分
高い鶏を選ばなくても、毎日のごはんはちゃんとおいしく作れます。違いを知ったうえで「今日は若どり」「週末は名前つきの鶏」と選べたら、鶏肉売り場がもっと楽しくなるはずです。
まずは次の買い物で、鶏肉のパックのラベルに「地鶏」の文字があるか探してみてください。
参考
- 農林水産省「地鶏肉の日本農林規格」(平成27年8月21日改正)https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/kikaku_jidori_150821.pdf
- 一般社団法人日本食鳥協会「銘柄鶏の定義」https://www.j-chicken.jp/brand/definition/
- 農林水産省「食鶏取引規格」https://www.maff.go.jp/j/press/seisan/c_shokuniku/pdf/110107-01.pdf


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