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パックのラベルに「交雑種」と書いてあって、手が止まったことはありませんか? ネットで調べると「交雑牛 危険」という言葉まで出てきて、余計に不安になった方もいると思います。
交雑牛は危険なお肉ではありません。黒毛和種とホルスタイン種をかけ合わせた牛のお肉です。私の売り場では、和牛と国産牛(ホルスタイン)のあいだの値段で並んでいます。和牛が100gあたり1,000円なら、交雑牛は400円くらいの感覚です。
交雑牛とは?黒毛和種とホルスタイン種のかけ合わせです
交雑牛は、黒毛和種とホルスタイン種をかけ合わせて生まれた牛です。母親がホルスタイン種、父親が黒毛和種という組み合わせが一般的です。
2つの品種を簡単に説明しておきます。黒毛和種は、霜降り(サシ)が入りやすいことで知られる、和牛の代表的な品種です。ホルスタイン種は、白黒もようでおなじみの乳牛の品種です。牛乳を出すのはメスで、オスは主にお肉用に育てられます。
業界では、交雑牛を「F1(エフワン)」とも呼びます。F1は「かけ合わせの一代目」という意味の言葉です。
交雑牛は「和牛」とは表示できない
交雑牛は、黒毛和種の血を半分引いていても「和牛」とは名乗れません。農林水産省のガイドラインでは、「和牛」と表示できるのは次の4品種で、国内で生まれて国内で育った牛だけと決まっています。
- 黒毛和種
- 褐毛和種(あかげわしゅ)
- 日本短角種
- 無角和種
この4品種どうしのかけ合わせなら「和牛」と表示できます。ただし、ホルスタイン種のような乳用の品種とかけ合わせた牛は、和牛には入りません。交雑牛が「和牛ではない国産の牛肉」として売られているのは、このルールがあるからです。
交雑牛は危険?「危険」と言われる理由に答えます
交雑牛のお肉だから危険、という根拠は見つかりませんでした。「危険」と検索する人の不安は、だいたい次の3つに分けられます。1つずつ、確かめられた事実だけでお答えします。
「交雑」という言葉が、遺伝子をいじったように聞こえる
「交雑」は、お父さんとお母さんの品種が違う、というだけの意味です。黒毛和種のお父さんとホルスタイン種のお母さんから生まれた子ども、ということです。遺伝子組み換えのように、人が遺伝子を直接いじる技術とは別の話です。
和牛と比べて安いから、何か理由があるのでは?
安い理由は品種の違いです。売り場での値段の差は、次の章でくわしく書きます。
ちゃんと検査されているのか不安
国内で食肉にされる牛は、品種に関係なく、と畜場で検査を受けます。獣医師の資格を持つ検査員が、1頭ごとに生きている状態と解体の前後を調べます。不合格になった牛は、食用にされずに廃棄されます。和牛も交雑牛もホルスタインも、同じこの検査を通ってから売り場に届きます。
実際、私の売り場でお客様から「交雑って大丈夫?」と聞かれたことはありません。
売り場での値段は、和牛1,000円なら交雑牛は400円くらい
交雑牛のいちばんの魅力は値段です。私の売り場の感覚で、同じくらいの部位を100gあたりで比べると、だいたい次の値段になります。
| 表示 | 中身の牛 | 100gあたりの値段の感覚(例) |
|---|---|---|
| 和牛 | 黒毛和種など | 1,000円 |
| 交雑種 | 黒毛和種×ホルスタイン種 | 400円 |
| 国産牛 | ホルスタイン種 | 300円 |
この数字は、私が働く売り場での体感をわかりやすく円にしたものです。実際の値段は、お店や部位、時期によって変わります。
和牛なら1,000円かかるところを、黒毛和種の血が入ったお肉が400円くらいで買えます。国産牛(ホルスタイン)と比べると、少し高くなるくらいです。

パックの表示の読み方と、品種を自分で調べる方法
パックのラベルで牛の種類を見分けるときは、名前の部分を見てください。私の売り場では、次のように書き分けています。
- 「和牛」:黒毛和種などの和牛
- 「交雑種」:黒毛和種とホルスタイン種のかけ合わせ
- 「国産牛」:ホルスタイン種
「国産牛」の中身は、お店によって違うことがある
注意してほしいのは、「国産牛」という言葉の範囲です。「国産牛」は本来、国内で育った牛のお肉という意味です。お店によっては、交雑牛を「交雑種」と書かずに「国産牛」とだけ表示して売っていることがあります。
私の売り場では「交雑種」まで書いてあるので、「国産牛」とだけ書かれていればホルスタインです。一方、表示が「国産牛」だけのお店では、中身が交雑牛かホルスタインか、ラベルからはわかりません。そんなときに役立つのが、次に紹介する個体識別番号です。
国産の牛肉と輸入の牛肉の違いは、こちらの記事でまとめています。
個体識別番号を検索すると、牛の品種がわかる
国産の牛肉のパックには、10桁の「個体識別番号」が書かれています。牛1頭ごとにつけられた番号で、この番号を調べると、その牛の品種(種別)までわかります。
調べ方は、次の3ステップです。
- パックのラベルから10桁の個体識別番号を探す
- 家畜改良センターの「牛の個体識別情報検索サービス」を開き、注意事項を読んで同意する
- 番号を入力して検索する
検索結果には、牛の種別、オスかメスか、生まれた年月日、どこで育ったかが表示されます。種別の欄に「交雑種」とあれば交雑牛です。

ただし、すべての牛肉に番号がついているわけではありません。農林水産省によると、ひき肉、舌(牛タン)、加工品などは表示の対象外です。輸入の牛肉にも、この番号はありません。
中の人は、交雑牛を焼肉・ステーキ・すき焼きに使います
私が自分で交雑牛を買うなら、焼肉、ステーキ、すき焼きに使います。
この3つは、お肉の良しあしで食事の満足度が変わる料理です。とはいえ和牛は値段が気になる。和牛の血が入っていて、少しでも値段を抑えて食べられるのが交雑牛です。
ただ、正直に言います。満足度だけで比べたら、黒毛和牛のほうが上です。それでも「焼肉はしたい。でも値段はほんとうに抑えたい」という日には、交雑牛をおすすめします。
すき焼き用のお肉の選び方は、こちらの記事も参考になります。
ステーキにするなら、品種と同じくらい厚みが大切です。
→ スーパーのステーキ肉の選び方。硬いのは焼き方ではなく、厚みが原因です
切り落としなら、品種は正直なんでもいい
反対に、切り落としを買うときは、品種は正直なんでもいいと私は思っています。切り落としは、煮込んだり、味をしっかりつけたりする料理に使うことが多いからです。切り落としなら、品種にこだわらず値段で選んで大丈夫です。
交雑牛のデメリットも正直に
交雑牛にも弱いところはあります。買ってから「思っていたのと違う」とならないように、先にお伝えします。
1つ目は、満足度では黒毛和牛にかなわないことです。黒毛和種の血は半分なので、和牛と同じ霜降りやとろける脂を期待すると物足りなく感じるかもしれません。和牛の脂の量と等級の関係は、こちらの記事で書いています。
→ A5の和牛が脂っこくて食べきれない。それ、等級の意味を知れば防げます
記念日など、黒毛和牛のおいしさをしっかり味わいたい日は、産地から取り寄せる手もあります。
▶ 佐賀のブランド和牛「伊萬里牛」を、育てている牧場から取り寄せる![]()
2つ目は、パックごとの差です。交雑牛は、同じ部位でも牛によってサシの入り方が全然違います。私が交雑牛のパックを選ぶときに見るのも、このサシの入り方です。表示だけで決めず、何パックか並べてサシを見比べてから選んでください。
交雑牛についてよくある質問
Q. 交雑牛は体に悪いですか?
A. 交雑牛だから体に悪い、という根拠はありません。国内で食肉にされる牛は、品種に関係なく、獣医師による1頭ごとの検査を受けてから出荷されます。
Q. 交雑牛と和牛はどちらがおいしいですか?
A. 満足度で言えば、正直、黒毛和牛のほうが上です。そのうえで、値段を抑えたい日の焼肉やすき焼きなら、交雑牛はおすすめできます。
Q. 交雑牛はなぜ和牛より安いのですか?
A. 品種が違うからです。交雑牛は黒毛和種と乳牛のホルスタイン種のかけ合わせで、ルール上も「和牛」とは表示できません。私の売り場の感覚では、和牛が100gあたり1,000円なら、交雑牛は400円くらいです。
Q. 「国産牛」と書いてあるお肉は交雑牛ですか?
A. お店によります。私の売り場では交雑牛を「交雑種」と表示しているので、「国産牛」はホルスタインです。表示が「国産牛」だけのお店では、パックの個体識別番号を検索すると品種がわかります。
次にお肉売り場へ行ったら、牛肉のパックのラベルと値段を見比べてみてください。「交雑種」の表示があれば、和牛と国産牛のあいだの値段で並んでいるはずです。焼肉やすき焼きの値段を抑えたい日は、交雑牛を一度試してみてください。
参考にした公的な情報
- 農林水産省「和牛等特色ある食肉の表示に関するガイドライン」
- 農林水産省「パック詰めの牛肉に書いてある個体識別番号とは何ですか。」(https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1901/02.html)
- 家畜改良センター「牛の個体識別情報検索サービス」(https://www.id.nlbc.go.jp/top.html?pc)
- 大分県「と畜検査の流れ」


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