「切り落としとこま切れ、どっちを買えばいいの?」
「前の店ではこま切れだったのに、この店には切り落とししかない……」
売り場の前で、こんなふうに手が止まったことはありませんか?
じつはこの2つ、はっきりした決まりで分けられているわけではありません。お肉の表示のルールを確認しても、2つの違いを決めた定義は見つかりませんでした。どちらの名前を使うかは、お店ごとの決め方に左右されます。
実際のところ、違いは「形がそろっているか」と「部位がまとまっているか」くらいです。形を見せたい料理なら切り落とし、形が気にならない料理ならこま切れ。この基準だけ持っていれば、もう迷いません。
切り落としとこま切れの違いは「形」と「部位のまとまり」
どちらも、大きなかたまりをスライスしたり整えたりするときに出る切れ端を集めたお肉です。そこは同じで、違うのは形と、入っている部位のまとまり具合です。
全国の食肉店の団体(全国食肉事業協同組合連合会)が出している消費者向けのQ&Aでは、一般的な傾向として次のように説明されています。
| 切り落とし | こま切れ | |
|---|---|---|
| 入っている部位 | 特定の部位の切れ端が多い(複数の部位のこともある) | いろいろな部位の切れ端が混ざりやすい |
| 厚さ | そろっていることが多い | ばらばらなことが多い |
| 大きさ | ばらばら | ばらばら(小さめが多い) |
| よく使われる料理 | すき焼き・しゃぶしゃぶなど | 焼きそば・野菜炒めなど |
いちばん大きな違いは、入っている部位の数です。精肉部門の中の人としての感覚でも、いろいろな部位が混ざっていれば「こま切れ」、部位が1つなら「切り落とし」と呼び分けるイメージで、Q&Aの説明とも重なります。
ただし、同じQ&Aの中で「特に規定があるわけではない」とも書かれていて、お店によっては同じように扱われていることもあるそうです。つまり表の中身も私の感覚も、あくまで「そういうことが多い」という目安です。パックの名前だけで中身を決めつけず、目で見て確かめるのがいちばん確実です。

名前はお店によって違う。ルールで決まっているのはここまで
お肉のラベルの書き方は「食肉の表示に関する公正競争規約」という業界のルールで決まっています。このルールでは、ラベルの品名は「牛」「豚」などの種類と、「かたロース」「もも」などの部位を組み合わせて書くのが原則です。
ただ、切れ端を集めたお肉は、どの部位かを書くのが難しいこともあります。そういうときは、種類の名前と形を組み合わせて品名にしてよいことになっています。「牛こま切れ」「豚切り落とし」といった名前がそれにあたります。業界団体の解説でも、部位を書かなくてよい例として、小間切れ・切り落とし・ひき肉が同じ並びで挙げられていました。
ルールが決めているのは、ここまでです。「こういうお肉はこま切れと呼びなさい」という線引きは、確認した範囲では見つかりませんでした。だから、よく似たお肉でも、ある店では「切り落とし」、別の店では「こま切れ」という名前で並ぶことがあります。
実際、私が働いている売り場では「切り落とし」で名前を統一していて、「豚こま」という名前は使っていません。
名前がお店ごとに違うのは、どちらかがごまかしているわけではありません。ルールの中で、お店がそれぞれ呼び方を決めているだけなので、安心してくださいね。
どっちを買う? 料理に合わせた選び方
いちばん大事な基準は1つです。「その料理で、お肉の形が見えるかどうか」を考えてください。
形を見せたい料理なら、切り落とし。
肉じゃが、牛丼、すき焼き風の煮ものなど、お肉が1枚ずつ見える料理です。厚さがそろっていると火の通りもそろうので、一部だけ硬くなるのを防げます。私の家でも、切り落としはお鍋によく使います。
形が気にならない料理なら、こま切れ。
野菜炒め、焼きそば、カレー、豚汁のように、ほかの具材と混ざってしまう料理です。小さめの切れ端なら包丁で切り直す手間もかかりません。
名前が1種類しかないお店なら、パックの中を見て決める。
うちの売り場のように「切り落とし」しか置いていないお店もあります。そのときは名前ではなく、パックの中の厚さと大きさを見てください。薄くて大きめのお肉が多ければ形を見せる料理に、小さめが多ければ炒めものやカレーに回せば大丈夫です。
もう1つ、ラベルに部位の名前が書いてあるかも見てみてください。「牛かた切り落とし」のように部位が書いてあれば、中身の部位がまとまっているパックです。部位の名前がなくても、それだけで品質が悪いわけではないので心配はいりません。いろいろな部位が混ざったパックは、脂の多いところと少ないところが両方入っていることが多く、炒めものやカレーなら気にならずにおいしく使えます。
牛と豚、もう一歩上手に選ぶなら
ここまでで「どっちを買うか」は決められるようになりました。次は、同じ切り落としやこま切れの中から「当たりのパック」を選ぶ段階です。見るポイントは牛と豚で少し違うので、別の記事にまとめています。
牛の切り落としは、部位の表示・白い部分が脂か筋か・スライスの厚みの3か所を見ると、当たり外れがぐっと減ります。ふるさと納税の返礼品を選ぶときの見方も含めて、こちらの記事で紹介しています。
豚こま(こま切れ)は、パックごとの当たり外れが出やすいお肉です。赤身の色・切れ端の大きさ・脂の入り方の3つで見分ける方法を、こちらにまとめました。
どちらの記事も、売り場の棚の前でそのまま使えるように書いています。

まとめ
- 切り落としとこま切れの違いは、形のそろい方と部位のまとまり具合くらい
- どちらの名前を使うかは、お店ごとの決め方に左右される
- 形を見せたい料理なら切り落とし、混ぜる料理ならこま切れを選ぶ
名前の違いが分かると、どのお店に行っても同じ基準で選べます。使い分けられるようになれば、毎日のおかずづくりがちょっと気楽になりますよ。
まずは次の買い物で、作る料理を1つ決めてから売り場に行ってみてください。「今日は肉じゃがだから切り落とし」と決めておくだけで、パックの前で迷う時間がなくなります。


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