「買ってきた牛肉のパックを開けたら、重なっていたところが黒っぽい。冷蔵庫に入れておいたら、表面が茶色くなってきた。これって腐ってる?」
そんなふうに手が止まったこと、ありませんか?
じつは、牛肉の色は「空気に触れているかどうか」で変わります。売り場でも、お客様から「重なったところが黒くなってるけど大丈夫?」と聞かれることがあります。
黒っぽいのは、空気に触れていないだけのことが多い色です。ただし、色で安全は決まりません。食べるかどうかの決め手は、期限・保存のしかた・におい・ぬめりの4つです。そして、食べるときは中心まで火を通しましょう。
牛肉の色が変わるのは「空気に触れているかどうか」です
牛肉の赤い色のもとは、ミオグロビンという成分です(農林水産省、日本食肉消費総合センターの解説より)。このミオグロビンが空気中の酸素に触れているかどうかで、同じお肉でも見える色が変わります。
色の変わり方は、次の3段階で覚えておくと迷いません。
- 空気に触れていないときは、暗い赤紫から黒っぽい色(切りたての断面、お肉同士が重なった内側)
- 空気に触れると、明るい赤(パックの上面)
- 時間がたつと、酸化が進んで茶色
パックの上面は赤いのに、めくると内側だけ黒っぽい。この差は、上面がパックの中の空気に触れているのに対して、重なった内側には空気が届かないために生まれます。

ここで、ひとつ大事なことがあります。重なっていた部分を広げてしばらく置くと、赤みが戻ってくることがあります。これは「空気に触れると色が変わる」という仕組みの話で、安全かどうかを確かめる方法ではありません。赤みが戻っても、それで大丈夫ということにはならないんです。
色は、新しさをはかるヒントにすぎません。農林水産省は「お肉はしっかり火を通してから食べましょう」というページで、食中毒の原因になる菌がお肉についているかどうかは、見ても嗅いでもわからないと説明しています。だから色だけで、「食べられる」とも「食べられない」とも決めないようにしましょう。
色別の早見:黒っぽい・灰色・茶色・緑っぽい
色ごとに、見えやすい場所と色の理由を短くまとめました。どの色でも、食べるかどうかは色ではなく、このあと紹介する4つの確認で決めます。
| 色 | 見えやすい場所 | 色の理由 |
|---|---|---|
| 黒っぽい・暗い赤紫 | 切りたての断面、重なった内側 | 空気に触れていない |
| 灰色っぽい・くすんだ色 | 重なった部分、空気が少ない部分 | 空気が少ない、時間がたった、のどちらか(色だけでは見分けにくい) |
| 茶色 | 上面、冷蔵庫で日がたったもの | 時間がたって酸化した |
| 緑っぽい | 決まった場所はない | 色ごとの公的な基準は見つかっていない |
黒っぽい色は、売り場でお客様から聞かれることがある色です。重なった内側や切りたての断面が黒っぽいのは、空気に触れていないことで説明がつきます。ただ、説明がつくというだけで、安全の保証ではありません。
茶色は、時間がたったサインです。新しさのヒントにはなりますが、「茶色だからすぐダメ」とも「茶色でも平気」とも、色だけでは言えません。
緑っぽい色については、生の牛肉の緑色が食べられるかどうかを決める公的な基準は、調べた範囲では見つかりませんでした。切り口が光の反射で虹色っぽく光って見えることもありますが、家で見分けるのは難しいです。見慣れない色や、迷う色のお肉は食べないでおきましょう。迷って食べないのは、慎重すぎではありません。
冷凍したお肉の黒ずみや茶色は、また別の話になります。売り場でも冷凍品はまず色を見ますが、黒や茶色は冷凍焼けでも傷みでも出る目印なので、色だけでは決めません。冷凍焼けの黒ずみや霜の見分け方は、こちらにまとめています。
→ ふるさと納税のお肉が冷凍焼けしたら? 黒ずみ・霜の見分け方と、食べられるかの線引き

売り場でパックを選ぶときは「期限→上面の色」の順に見る
棚の前に立ったら、まずラベルの期限表示を見ます。生のお肉には「消費期限」が付いていることが多いです。今日明日で使うのか、数日先に使うのかを思い浮かべながら確かめてみてください。
次に、パックの上面の色を見ます。選べるなら、上面が明るい赤のものにしましょう。茶色っぽくなっているパックは、私は店では買いません。茶色は時間がたったサインだからです。
パックを傾けて重なった内側が黒っぽく見えても、ここまでの仕組みどおりの色です。それだけでパックを棚に戻す理由にはなりません。食べられるかどうかは、家で使う前に4つの確認をして決めます。
パックの底にたまる赤い汁は、色とは別の話です。正体と扱い方は、こちらで詳しく書いています。
→ お肉のドリップとは?パックの赤い汁は血じゃない。出たときの扱い方と選び方
家に着いたら、ラベルの保存方法の表示どおり、すぐに冷蔵庫へ入れましょう。期限は「表示どおりに保存したとき」の話です。車の中に長く置いたり、台所に出しっぱなしにしたりすると、期限内でも前提が崩れてしまいます。
家の冷蔵庫で茶色くなっていたら:4つを確かめて、早めに使う
冷蔵庫の牛肉が茶色くなっていたら、使う前に次の4つを確かめましょう。どれか1つでも当てはまったら、そのお肉は食べないでください。
- 期限が過ぎている
- ラベルの保存方法どおりに保存していない(常温に置きっぱなしにした、など)
- 酸っぱいにおい、ツンとくるにおいがする
- 表面がぬるぬるしている
お肉が本当にダメかどうかの決め手になりやすいのは、においです。ただ、牛肉にはもともと独特のにおいがあって、傷んだにおいとの違いはわかりにくいこともあります。迷ったら、食べないのが正解です。買ったばかりで気になるときは、レシートを持って買ったお店に相談すれば大丈夫です。
注意してほしいのは、4つに当てはまらなくても、それで安全と決まるわけではないことです。先ほどの農林水産省の説明どおり、菌がついているかどうかは見ても嗅いでもわかりません。
だから、食べるときは中心まで火を通しましょう。厚生労働省の「家庭での食中毒予防」では、中心部を75℃で1分間以上加熱するのが目安とされています。中まで火が通ったかを見た目だけで確かめるのは難しいので、気になる方は肉用温度計を使うと安心です。
→ 肉用温度計は買いか? 精肉のプロが考える「要る人・要らん人」の線引き
家にある牛肉が茶色くなってきたら、私は早めに使います。茶色は時間がたったサインなので、期限内でも後回しにはしません。そういうときに私がよく作るのは、炒め物です。
すぐに使う予定が立たないときは、期限内のうちに冷凍しておきましょう。家で冷凍したお肉は、2週間を目安に使い切ります。
うっかり期限を過ぎてしまったときの考え方は、こちらにまとめています。
→ お肉の消費期限、1日過ぎたら食べられない? 売り場の中の人の答えと、捨てないための段取り
まとめ
- 牛肉の色は、空気に触れているかどうかで変わる。黒っぽいのは空気に触れていない、茶色は時間がたったサイン
- 色は新しさのヒントで、安全は色では決まらない。赤みが戻っても安全の確認にはならない
- 期限切れ・保存表示どおりでない・酸っぱいにおい・ぬめりのどれかがあれば食べない。食べるときは中心部75℃で1分間以上
色の理由がわかると、パックを開けて黒っぽくてもあわてずにすみます。そのぶん、確かめるべきところにきちんと目を向けられます。
次の買い物では、棚の前でまず期限表示、次に上面の色を見てみてください。そして冷蔵庫の牛肉が茶色くなってきたら、4つを確かめて、早めに使い切りましょう。


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